6月18日、今日は幼馴染の誕生日。
今年も今までと同じように私は幼馴染のためにケーキを焼いている。

「…よし、我ながらなかなかの出来」

焼きあがったケーキは自分で言うものなんだけどおいしそうだ。
元々お菓子作りが趣味なわけでもなく、ケーキ以外のものはお菓子に限らず何も作れない。
でもケーキだけは毎年作っているのでやたら上達したのだ。



ケーキを持って幼馴染の涼太の家に行き、チャイムを鳴らす。
玄関から出てきたのは涼太。

「お、じゃないっスか」
「はい、誕生日おめでとう」

そう言ってさっきのケーキを差し出す。

「わー!ありがとっス!!」
「はい、どういたしまして」

そう話しながら涼太の家へ上がる。
焼いたのはホールケーキ。どうせ涼太一人じゃ食べきれないから毎年私も一緒に食べている。

涼太の家のリビングでケーキを切り分けて、お茶を入れて二人でケーキを食べ始める。
勝手知ったる他人の家とはまさにこのことだろう。

「おいしいっス!」
「ありがと」
「なんか料理の腕上がってない?」
「そりゃ、毎年作ってたらね」

最初に涼太の誕生日にケーキを作ったのは小3のとき。
もちろん一人で作った訳ではない。
涼太への誕生日プレゼントが決まらない、とぐずっていた私に、母親が「だったら一緒にケーキを作ろう」と言ってくれたのだ。
その年、ケーキを渡したら今まで以上にキラキラした笑顔で喜んでくれたので、ケーキをあげるのが毎年恒例となった。

「でもまあ、こういうふうに誕生日祝えるもの今年までかな」
「ええええ!?もうオレの誕生日祝ってくれないんスか!?」
「だってもうお互い高校生でしょ。幼馴染だからっていつまでもこうしていられないんじゃない」

別に私だって涼太との関係を終わらせたいわけじゃない。
でも幼馴染とはいえ高校生の男女がいつまでもこんな関係でいられるわけじゃないとも思うのだ。

「えー!別にいいじゃないっスか!」
「『えー!』って…。どっちかっていうとあんたのためなんだけど」

涼太はモテる。モデルもやってるバスケ部のエースじゃ当然だ。
それなのにいつも近くに同年代の女子がいるっていうのは、ちょっとまずい気もするのだけど。

「どうでもいいじゃないっスか、そんなの」
「そんなのって…」
「だってのケーキ食べられなくなるなんて、悲しすぎるっス!!」

ケーキだけですか、と内心ツッコミを入れながら、少し嬉しくなる。

「そんなに私のケーキが好きなら、毎年作ってあげるわよ」
「やった!」

涼太は無邪気に笑う。
プロポーズみたいなセリフだなあ、と二人とも気づいているけれど、
今はまだ何も言わないでおこう。













エンゲージ
120618

黄瀬ハッピーバースデー!
黒バスキャラの中で一番幼馴染話が書きたくなります