「痛、」
「どうした?」
「唇、切っちゃった」

自分の唇に手をやると、じんわり血が出てた。ティッシュで拭いたけど、また出てくる。どくどく流れてるわけじゃなく染み込むようにでているだけだけど、ちょっと痛い。

「何やってんだよお前は…」
「ちょっとこの紐切ろうとして力入れたら…」
「お前どんだけ力入れてんだよ、普通唇なんてそう簡単に切れねぇだろ」

リョーガはティッシュを一枚取って私の唇の血を拭う。わ、なんかなんか、ドキッとする。

「唇切るときって、痛いの我慢するときとかじゃねーか?」
「切っちゃったもんはしょうがないじゃん。ていうか手、どけて」

さっきからリョーガの手は私の唇に触れたままで、なんていうか、こう、変な感じになるというか。だから、早くどけてほしいんだけど。

「何だ、照れてんのか?」
「な、べ、別に!」
「お前今更こんなことで照れんなよ」
「だーかーら!照れてないって!」
「あ、また血出てきてるぞ」

そう言うと、リョーガは自分の唇で私のそれを塞ぐ。私が反射的に目を瞑ると、リョーガは少し唇を離して、私の唇をペロっと舐めた。

「っつ」

切った部分が少し染みて、思わず顔を歪める。

「鉄の味」
「…そりゃ血舐めたんだから」
「結構うまいな」
「あんた味覚おかしいんじゃないの?」
「そんなことねぇよ」

リョーガはまた私にキスをして、やっぱりうまい、と言った。自分で唇を舐めてみたけど、全然おいしくなんてない、鉄の味しかしない。

「やっぱりおいしくないよ」
「あー、あれだ、多分の味だからうまいんだな」
「は?な、何言ってんの!?」

恥ずかしくて思いっきり叩いてみたけど効果はなくリョーガは繰り返しキスをしてくる。やっぱり鉄の味をおいしいとは思えないけど、リョーガのキスは甘い 気がした。

















Fe(比重7.86)
07.01.26