「痛っ」
「どうしたの?」
「…目にゴミが入ったみたいだ」

辰也がそう言うので、俯いた辰也の顔を覗き込む。

「大丈夫?…っ」

そう聞いてみたけど、すぐに心配したことを後悔した。

「…何するの」
「キス」
「ゴミは」
「どこか行ったみたいだ」
「……」

…この人は……。

、怒らないでよ」
「……」
「だって今日はエイプリルフールだろ?」
「……」

ぷいとそっぽを向いてみせると、辰也はしゅんと落ち込んでしまった。
だって、確かに今日はエイプリルフールだけど、辰也はいつもそんなの関係なく私のことからかってくるじゃない。
いつも騙される自分が悔しい。

、ごめんね」
「……」
「……」

謝っても無視し続ける。
だって辰也の「ごめんね」はいつも謝ってない!

「……」
「……」

ちらりと辰也を見てみる。
いつもここで私が折れるせいか、辰也はなんだか寂しそうな顔で俯いている。

「…辰也…」

…なんか、可哀相になってきた。
今までからかわれ続けたのもあってちょっとイラッとしたけど、普通に考えれば可愛い嘘。

「辰也、あの」

そう言って辰也の顔を覗き込む。
次の瞬間、辰也の腕が私の腰に回った。

「え!?」

「ちょ、え、あ、落ち込んだふり…!?」

この期に及んでこの人は…!

「そんなことないよ、本当に寂しかった」

そう言って辰也はまたキスをする。

「…ねえ」
「ん?」
「こんなふうにしないで、普通にキスすればいいのに」

だってここは辰也の部屋で、他には誰もいない。
普通にしてくれれば、私だって怒らないのに。

「だって、の驚いた顔が可愛いから」
「……」
「ほら、その顔」

辰也は楽しそうに笑うと、本日何度目かわからないキスをする。

「はあ〜…」
「どうしたの?」
「もういいや、もう…」

もう一生騙されて、からかわれてもいいよ。
可愛いと言ってキスしてくれるなら。







可愛い(嘘と顔)
13.04.01

4月バカップル





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