「ん…」

目を開けると、外はもう明るい。

「…何時…」

枕元にある携帯で時間を確かめる。
…まだ、眠っていてもいいかな。
今日は私も辰也も休みだし。

そう思いながら隣で眠る辰也を見る。
ゆっくりさせてあげよう。

「おやすみ」

そう言って布団に潜る。
そしたら突然辰也の腕が背中に回ってきた。

「わっ!」
「おはよ」
「…起きてたの?」
「半分ね」

確かに、辰也の顔は少し寝ぼけている。
…かわいい。

「ふふ」
「どうしたの?」
「辰也の寝ぼけた顔、好きだなあって」

そう言うと辰也は少し驚いた顔をする。

「こんな顔が?」
「うん。かわいい」
「…可愛いはあんまり嬉しくないなあ」
「でも可愛いよ。油断してるっていうか…うーん…」
「?」

なんとなく「油断してる」という表現は適当じゃない気が…。
なんて言えばいいんだろ。

「あ、あれだ。気を許してる感じ!」

それだ。
なんとなく、気を許してくれているから見せてくれる顔というか。

「許してるよ」
「うん」
にだけね」
「ふふ」

辰也がそう言ってくれるので嬉しくなる。
全然かっこよくないし、せっかく整った顔の辰也がちょっと崩れてしまってるんだけど。
私が独り占めしてる、辰也の寝ぼけ顔。
私だけに許してくれていると思うと、自然と笑みがこぼれる。

「一番好きかも」
「そんなに?」
「うん」

バスケをしているときの真剣な顔とか、楽しそうに笑う顔とか、好きだなあと思う表情はたくさんあるけど、寝ぼけ顔は…なんていうんだろう。
嬉しくなると言うか、…愛しい、みたいな。

「オレの好きなの顔はね」

辰也は妖しく笑うと、私の体を引き寄せる。
あ、これ、まずいかも。

「た、辰也」

身構えると、私を抱きしめていた腕を移動させる。
あ、


「あははっ!くすぐったい!ふふ、た、辰也!」

辰也は私のわき腹を思い切りくすぐる。
ダメだ、くすぐったい!

「その顔」
「え…?」

笑いすぎて苦しい。
息を切らしていると、辰也が私の頬を撫でる。

の笑った顔が、一番好きだよ」

本当は自然に笑った顔がいいけどね、と辰也は付け加える。
胸の奥が、きゅんと締め付けられる。

「…辰也」
「その顔も好きだな」
「え?」

辰也は自分と私のおでこを合わせる。

「本当は欲しいのに、恥ずかしくて言い出せない顔」

かあっと顔が赤くなるのを感じる。

「ば、バカ!」
「ははっ」

辰也を小突くと、笑って頭を撫でられた。

「可愛い顔、もっと見せて?」

辰也は私をシーツ転がして、キスをする。
いつものちょっと意地悪な顔で笑って。

その顔も好きだな、と思った私は、きっともう末期だ。















ふたりだけのひみつ
14.01.21

油断しまくってる寝ぼけ顔氷室さんが見たいです
氷室は「自分だけが知ってる彼女のこんなところ」みたいなのが好きそうですね
お互いだけが知ってるお互いの表情、氷室さん超燃えそう






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