背の高い人は普段頭を撫でられることがないから、撫でてもらうと喜んで懐くらしい。
ということで、早速実践してみよう。

「ねえ辰也、ちょっと屈んで」
「?」

陽泉バスケ部にいると目立たないけど、辰也はずいぶん背が高い。
それに男子は撫でられ慣れてなさそうだし、懐いてくれるかな、と。

「ね!」
「…?」

辰也は訝しげな表情で少し屈むけど、足りない。
届くには届くけど、つらい。

「どうしたの?」
「頭、撫でさせて!」
「?」
「…ダメ?」
「別にいいけど…急にどうしたの?」
「背の高い人って撫でられることないから、撫でられると喜んで懐くって聞いて」
「もう懐いてるけど」
「…そうだけど、撫でてみたいの!」

懐くとかそういうのもあるけど、単純に辰也の頭を撫でてみたい。
ときどき辰也が私の頭を撫でるように。

「辰也、あんまり撫でられたことないでしょ?」
「……」
「あれ、ある?」

辰也は何かを思い出したような表情をする。
お母さんとかかな。

「いや、アレックスがね、よくオレとタイガの頭わしゃわしゃ撫でてきてさ。子供扱いされてるみたいで嫌だったんだけど」

辰也は少し寂しげな表情でそう言う。
ああ、そっか。

「…じゃあ、やめるね」
「え?」
「だって、今、嫌って」
「ああ、それは子ども扱いされて撫でられるのがね。そうじゃないなら、どうぞ」

そう言って辰也は屈む。
少し躊躇いながら辰也の頭を撫でてみる。

「…どう?」
「変な感じだ」
「?」
「いつもオレが撫でてるから」

辰也は目を瞑る。
何を考えてるんだろう。

「…辰也?」
「…なにもしてないのに撫でられるのも変な感じかな。大体褒められるときだろ?」
「あ、そっか。じゃあね…」

辰也の褒めるところ。たくさんあるけど…。

「…いつも、頑張ってるから」
「?」
「バスケ」

よしよし、と辰也を撫でる。
少しくすぐったそうな顔だ。

「…オレは、」
「?」
「オレは、頑張れてる?」

辰也は目を瞑ってそう聞いてくる。
私はすぐに頷いた。

「うん」
「…そっか」
「辰也は、たくさん頑張ってるよ。いつもね」

辰也は私を抱きしめる。
今度は辰也の背中を撫でた。

「…本当、これ以上、に懐かせてどうするの?」
「…どうしよう」

辰也は少し頬を摺り寄せる。
…軽い気持ちで言ってみたけど、言ってみてよかった。

「また撫でてね」

辰也は目を細めてそう言う。

「…うん」
「…

辰也は私の頬を撫でる。
冷たい手。

「…がこうして傍にいてくれるなら、何があっても、頑張れそうな気がするよ」

私は辰也を抱きしめて、もう一度頭を撫でる。
さっきみたいに頭のてっぺんじゃなくて、後ろの方を、優しく。

「ずっと一緒にいるよ、大丈夫」












頑張る君へ
13.10.23

氷室祭りは全部連載ヒロインのイメージで書いてると言いましたが、
今回は特にそうです 連載室ちんと連載ヒロイン

最初は普通に頭撫でるだけのほのぼの話の予定だったんですがいつの間にかシリアス路線に
「何でもできるような気がする」ではなく「何でも頑張れそうな気がする」なのが個人的ポイント
誰もがなんでもできるわけじゃない、でも支えるになる人がいるから頑張れる そんな話が書きたいです





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