隣の席の黒子くんとした会話。
なんとなく、本当になんとなく、黒子くんがバスケ部だということを思い出して言った言葉。

「バスケの試合って面白いの?ほとんど見たことないや」
「だったら見に来ますか?」

バスケ部はどの学校にもあるくらいメジャーなスポーツのはずなのに、テレビでやってるところを見たことがない。
面白いのかなあ、なんて思って世間話程度に話したら、なぜかいきなりそんな話に。

「今週末、うちの学校で練習試合やるので、よかったら」
「練習試合?」
「はい。バスケの試合ってテレビじゃあまりやりませんし、予定がなかったらぜひ」

週末は予定もないし、うちの高校でやるなら家からもそれなりに近い。
元々スポーツを見るのは好きだし、特に断る理由もなく、試合を見に行くことにした。





試合当日、体育館の2階で試合開始を待つ。
コートを眺めるとアップしてる最中の黒子くんと目が合った。
黒子くんが軽く会釈をするので私もつられて会釈する。
すると隣にいた火神くんも私に気付いたようで、黒子くんと何か話をしてる。

「どんな試合になるのかなあ」

独り言を呟きつつ、これから始まる試合に集中する。





さん」
「は、はいっ!?」
「…どうしたんですか?」

試合後、校門の前で黒子くんに呼び止められて慌てて振り返る。

「いや、ちょっとびっくりしただけで」
「そうですか。驚かせてしまってすいません。で、どうでした?」
「え?」
「試合。面白かったですか?」

そう、試合。試合を見に来たのだ。
試合は面白かった。思ったよりずっと。
それより何より、私にとって印象深かったのは目の前の人だった。

普段は目の前にいても見失いそうなくらい影が薄いのに、コートの中ではびっくりするくらいかっこよかった。
さっきまではただのクラスメイト、よく言って友人程度。

そのはずだったのに。

さん?」
「は、はいっ!?」
「なんだかぼーっとしてますけど、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫!大丈夫だよ!」
「そうですか。それならいいんですけど…」
「おーい、黒子ー」

そんな会話をしていると、向こうから火神くんがやってくる。

「火神君」
「お前まだ着替えてなかったのか?」
「はい。さんと話してたので」
「へえ」

火神くんは私を一瞥すると、すぐ黒子くんのほうを向いて「いいから着替えてこいよ」と言った。

「はい。さん、今日は来てくれてありがとうございました」
「こちらこそ、誘ってくれてありがとう」

そう言って黒子くんは走って部室へ向かう。
あ、そういえば、まだちゃんと言っていない。

「黒子くん!」

大きな声で黒子くんを呼び止める。
驚いたように黒子くんはこちらを見た。

「試合、とっても面白かったよ!」

さっき慌ててしまって伝えられなかったことを伝えると、黒子くんは笑った。

「ありがとうございます!」

そう言って、黒子くんは今度こそ部室へ走って行く。

「……うああああ…」
「おわっ…なんだよ、何うなだれてんだよ」
「火神くん、スポーツ選手って、やっぱスポーツしてるときが一番かっこいいね」
「?何言ってんだ??」

さて、来週学校でどんな顔して黒子くんに会えばいいのやら。

















ゴールデンタイムラバー
12.07.22

タイトルはスキマスイッチの曲から
スポーツにぴったりの曲です
特に黒子くんに合うと思います

スポーツ選手は、どんなカッコいいポーズで写真撮ったりポーズ決めてるより、その種目やってるときが一番カッコいい
なんというか、誇張表現でなく「輝いている」と思います