隣の席の黒子くんとした会話。 なんとなく、本当になんとなく、黒子くんがバスケ部だということを思い出して言った言葉。 「バスケの試合って面白いの?ほとんど見たことないや」 「だったら見に来ますか?」 バスケ部はどの学校にもあるくらいメジャーなスポーツのはずなのに、テレビでやってるところを見たことがない。 面白いのかなあ、なんて思って世間話程度に話したら、なぜかいきなりそんな話に。 「今週末、うちの学校で練習試合やるので、よかったら」 「練習試合?」 「はい。バスケの試合ってテレビじゃあまりやりませんし、予定がなかったらぜひ」 週末は予定もないし、うちの高校でやるなら家からもそれなりに近い。 元々スポーツを見るのは好きだし、特に断る理由もなく、試合を見に行くことにした。 * 試合当日、体育館の2階で試合開始を待つ。 コートを眺めるとアップしてる最中の黒子くんと目が合った。 黒子くんが軽く会釈をするので私もつられて会釈する。 すると隣にいた火神くんも私に気付いたようで、黒子くんと何か話をしてる。 「どんな試合になるのかなあ」 独り言を呟きつつ、これから始まる試合に集中する。 * 「さん」 「は、はいっ!?」 「…どうしたんですか?」 試合後、校門の前で黒子くんに呼び止められて慌てて振り返る。 「いや、ちょっとびっくりしただけで」 「そうですか。驚かせてしまってすいません。で、どうでした?」 「え?」 「試合。面白かったですか?」 そう、試合。試合を見に来たのだ。 試合は面白かった。思ったよりずっと。 それより何より、私にとって印象深かったのは目の前の人だった。 普段は目の前にいても見失いそうなくらい影が薄いのに、コートの中ではびっくりするくらいかっこよかった。 さっきまではただのクラスメイト、よく言って友人程度。 そのはずだったのに。 「さん?」 「は、はいっ!?」 「なんだかぼーっとしてますけど、大丈夫ですか?」 「うん、大丈夫!大丈夫だよ!」 「そうですか。それならいいんですけど…」 「おーい、黒子ー」 そんな会話をしていると、向こうから火神くんがやってくる。 「火神君」 「お前まだ着替えてなかったのか?」 「はい。さんと話してたので」 「へえ」 火神くんは私を一瞥すると、すぐ黒子くんのほうを向いて「いいから着替えてこいよ」と言った。 「はい。さん、今日は来てくれてありがとうございました」 「こちらこそ、誘ってくれてありがとう」 そう言って黒子くんは走って部室へ向かう。 あ、そういえば、まだちゃんと言っていない。 「黒子くん!」 大きな声で黒子くんを呼び止める。 驚いたように黒子くんはこちらを見た。 「試合、とっても面白かったよ!」 さっき慌ててしまって伝えられなかったことを伝えると、黒子くんは笑った。 「ありがとうございます!」 そう言って、黒子くんは今度こそ部室へ走って行く。 「……うああああ…」 「おわっ…なんだよ、何うなだれてんだよ」 「火神くん、スポーツ選手って、やっぱスポーツしてるときが一番かっこいいね」 「?何言ってんだ??」 さて、来週学校でどんな顔して黒子くんに会えばいいのやら。 ゴールデンタイムラバー 12.07.22 タイトルはスキマスイッチの曲から スポーツにぴったりの曲です 特に黒子くんに合うと思います スポーツ選手は、どんなカッコいいポーズで写真撮ったりポーズ決めてるより、その種目やってるときが一番カッコいい なんというか、誇張表現でなく「輝いている」と思います |