「…よし、こんなもんか」

黄瀬の彼女である私は、ときどき黄瀬のためにお弁当を作っていた。
先月、最初にお弁当を作ってほしいと頼まれた時、元々自分のお弁当を作っていたし、別にいいよと普通に了承。
材料の問題とかもあるから毎日は作ってないけど、今でもたまに作っている。
そして今日はその「たまに」の日。

「……」

自分で出来上がったお弁当を見て顔を赤くする。
う、やっぱりやめておけばよかったかな…。

6月18日。今日は黄瀬の誕生日。
誕生日だし、特別ってことでご飯を桜でんぶでハートマークにしてみた。
…普段こんなことしないから、死ぬほど恥ずかしい。

でも、たまに「アレやってほしいっス!あのピンクのハートマークのやつ!」なんて言ってきてたし…。
そう言われるといつも「やらない」と即答してきたけど、今日ぐらい…。

「…」

…うだうだ言ってても仕方ない。
お弁当を鞄に入れて学校に向かった。





「いや〜誕生日にっちのお弁当が食べられるなんて幸せっス!」
「どうも」

黄瀬と私は校庭の片隅でお弁当を開ける。
…ど、どうだ。私のハートマーク。

っち…!」
「き、黄瀬?」
「もーーー愛してるっス〜〜〜!!」

黄瀬は立ち上がっていきなりそう叫ぶ。

「き、黄瀬、落ち着いて」
っちやっとハートマーク作ってくれたんスね!しかもオレの誕生日に!も〜〜〜愛してるっス!!」

黄瀬は私の作ったお弁当を高く掲げる。
神にでも捧げる気か。

「もうちょっとこれ自慢してくるっス!」
「はあ!?」
「あ、笠松せんぱーい!!小堀せんぱーい!!」

黄瀬はお弁当を持ったまま走り出した。
ちょ、ちょっと待って!

「見てくださいよ〜これオレの彼女が作ってくれたんスけど」
「あ?」
「ハートマークっスよハートマーク!もーオレ感動しちゃって!」
「黄瀬ええええ!!!」

走って黄瀬を追いかける。
あ、あれを人に見せるとは…!

「何してんのよバカ!」
「え?」
「人に見せるな!最低!」
「え!?」
「もう作ってこないから!」
「ええ!?」

半泣きになって黄瀬からお弁当を取り上げる。
あのハートマークを見られたかと思うと…思うと…!

「いやだってっちのお弁当があまりに嬉しくて」
「バカ!最低!知らない!」
っち〜〜〜!!」


そんな言い合いを見て、笠松先輩と小堀先輩が呟く。

「あいつら何やってんだ?」
「痴話喧嘩じゃないか」
「ああ…」


そんなことを言いつつも、結局また黄瀬にお弁当を作ってしまう私は、結局彼に弱い。









小さなハートマーク
13.06.18

黄瀬誕生日おめでとう!






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