「ねえねえちゃん。コンビニでアイス食べてかない?」
「うん、いいよ」

部活も終わり、さつきちゃんと二人で帰っているときのこと。
さつきちゃんにそう提案されたのでコンビニに寄ることになった。


「どれにしようかな〜」
「オレはねーこれがオススメ」
「わっ!?」

アイスの前で迷っていると、後ろから長い腕が伸びてくる。
紫原くんだ。

「びっくりした…」
ちん、アイス買うの?」
「うん。これ、おいしいの?」
「おいしいよ〜」
「じゃあ、それにしようかな」
「これ食べればもうちょっと大きくなるかもね〜」
「……」

紫原くんは私の頭をぽんぽんと叩く。
…確かに私は小っちゃいけど、紫原くんは規格外なんだよ!

「ありゃ、不機嫌?」
「むっくん、ちゃん小さいの気にしてるんだから」
「ふーん」
「…もう」

さつきちゃんがそう言ってくれるけど、紫原くんは悪びれずアイスを物色し始める。
…もう、いいや。

紫原くんはお菓子好きだし、オススメのアイスはきっと本当においしんだろう。
彼のオススメアイスを手に取ってレジへ向かう。
会計を待っているとき、バスケ部の面々が次々にコンビニに入ってくる。
紫原くんだけじゃなく、みんな来ていたのか。

「みんなも来たんだね」

みんな会計を済ませ、外に出る。
みんな背が高いから、揃うとすごい迫力だ。

さんのアイス、おいしそうですね」
「黒子くん。これね、紫原くんがおいしいっていうから」
「そうなんですか」

そう言ってアイスを一口食べる。
…うん。おいしい!

ちん、おいしい?」
「うん。教えてくれてありがとう」
「そう思うなら一口〜」
「え?」

ひ、一口?
戸惑っていると、紫原くんは私の手からアイスを取ってしまう。

「あ!」
「おいしいね〜」
「……」

た、食べられちゃった…。

「はい、返す」
「……」

紫原くんは残りを返してくれるけど、その…。

「紫原君、そういうのはちょっと…」
「黒ちん、何が?」
「男同士じゃないんですから、食べかけを渡したりとかはよくないですよ」
「そうなの〜?」
「う、うーん…」

はっきり「うん」とは言い難いけど、やっぱり食べづらい。
ど、どうしよう。

「気にすることないのに〜」
「そ、そうかな…」
「気になるなら、オレ食べちゃう」
「あ!」

そう言うと紫原くんは残りのアイスも全部食べてしまう。
…うーん、しょうがない。

「ごちそうさまー」
「紫原君…」
「黒ちん、なーに?」
「…いえ」
「そう?じゃあオレゴミ捨ててくる〜」

紫原くんはゴミ箱の方へ。
黒子くんは私を心配そうに見つめる。

さん、ボクのお菓子あげましょうか?まだ開けてませんし…」
「え?いいよそんなの!」
「でも、食べられちゃいましたし…」
「大丈夫!」
「そうですか?…それにしても紫原君は自由ですね」
「でも、そこが紫原くんのいいところだし」

そんな会話をしていると、青峰くんがやってくる。

「テツ、まだ食ってねーの?」
「まあ」
「食わねーから背伸びねーんじゃねーの?」

青峰くんはからかうように笑ってそう言う。

もちゃんと食えよ?ほそっけー体しやがって」
「え?」
「さつきなんてめっちゃ食うぞ。あいつ栄養全部胸に行ってんじゃねー?」
「あ、青峰くん!」
「青峰君、軽くセクハラです」
「あ?」
「…自覚ないんですか」

青峰くんの言葉に顔が赤くなる。
む、胸って…。

「青峰君…!」

青峰くんの後ろから、さつきちゃんの声が聞こえる。
…すごく、怒った声だ。

「げ、さつき」
「バカ!サイテー!ちょっとこっち来て!」
「うわ、痛!離せって!」

青峰くんは、さつきちゃんに耳を掴まれて連行されていきました…。

「あれ?青峰っちどうしたんですか?」

そう言って次にやってきたのは黄瀬くんだ。

「桃井さんを怒らせたので連行されました」
「ははっ、青峰っちも桃っちには弱いっスね〜」
「そうですね」
「……」
さん?顔が怖いですよ?」
「えっ!?」
「黄瀬くんに何かされました?」
「え、オレなんかしたっスか!?」
「なんだか、黄瀬君といるといつもこうなるので」
「そ、そういうわけじゃ…」

私は自他ともに認める人見知りだ。
黄瀬くんはこの間入部したばかり。
まだ慣れなくて、なかなか他の人みたく話せないと言うか…。

「ご、ごめんね。その…ちょっと人見知りで」
「ああ、そういうことっスか」
「うん、ごめんね…」
「いや〜大丈夫っスよ!まだ知り合ったばっかっスからね!」

黄瀬くんはそう言ってにっこり笑ってくれる。
よかった。不快にさせてしまったら申し訳ない。

「ていうか黒子っち、まだお菓子食べないんスか?」
「あ…みなさんと話してたら、忘れてました」
「お前ら、まだ帰っていなかったのか?」

黒子くんがお菓子の袋を開けようとしたとき、緑間くんの声出した。
顔を上げると赤司くんも一緒だ。
二人は確か部活後先輩達とミーティングをしていたはず。
それが終わるほど、のんびりしてしまったのか。

「明日も朝から練習だぞ。あまりのんびりしていては練習に影響が出る」

赤司くんにそう言われれば、みんな言うことを聞く。
コンビニ前でたむろしていた部員たちは帰路につき始める。

「あ、ちん」
「紫原くん、どうしたの?」
「これ、当たったから返す」
「?あ、当たり棒…」

そう言って紫原くんが差し出してきたのは、さっき私から取って行ったアイスの当たり棒。

ちんの食べてたら出て来たから、あげる」
「ふふ、ありがとう」
「当たり棒だと!?」

紫原くんと会話していると、緑間くんが鼻息荒く入ってくる。

「み、緑間くん?」
、それを明日一日貸してくれ!」
「え?」
「おは朝によると明日のラッキーアイテムはお菓子の当たりなのだよ!」

お、おは朝ってそんなものまでラッキーアイテムにしちゃうんだ…。
そもそもラッキーだから当たるものなのに、それがラッキーアイテムってなんか矛盾してる気が。

「大抵のものは揃えられる自信があるが、当たり棒は運だからな…。もちろん明日一日が終われば返す」
「う、うん。大丈夫」
「恩に着るのだよ」

緑間くんは満足そうに笑うと、当たり棒をティッシュに包んで鞄の中にしまった。

さん、本当にお菓子なくなっちゃいましたね」
「まあ、緑間くんは明後日返してくれるって言うし」
、何も食べていないのか?」

今度は赤司くんがやってくる。

「う、うん。まあ…いろいろあって」
「そうか。ならこれをあげよう」
「え?」

そう言って赤司くんが差し出してきたのは、なんだか高級そうな、上品そうなお菓子。

「え、え!?これいいの?」
「ああ、父のもらいものでね」
「なんか、高そうだけど…」
「そうでもないさ」

赤司くんは微笑んでくれるけど、絶対そんなことない…。

さん、よかったですね」
「え?」
「アイスは当たり棒あるからちゃんと食べられますし、いいお菓子ももらえたじゃないですか」
「…本当だ」

そう言われれば、確かに。
実は結構ラッキーだったのかも?

「明後日、返してもらったらアイスもらわなきゃ」
「じゃあ、また明後日もみんなで来ましょうね」
「うん!」









平和なある日のこと
13.09.17

蒼衣さんリクエストのキセキ+桃井にからかわれる小っちゃい人見知りのマネージャーの話でした!
蒼衣さんありがとうございました〜!

結局おいしいところを持って行く赤司さん
とか思ってましたけどたぶん一番おいしいところを持って行ってるのはずっとそばにいた黒子くんですね






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