「…はあっ…」
「疲れた?」
情事の後、辰也が私の髪を撫でながらそう聞いてくる。
「う、うん」
「そっか」
辰也は私のおでこにキスをすると、私を寝かせて腕枕をする。
「無理させちゃった?」
自覚あるんかい、と心の中で突っ込む。
「う、うん。少し」
「そっか。ごめんね」
「いいよ、今日は特別」
そう、今日は、今日だけは特別。
「誕生日おめでとう」
今日は、辰也の誕生日だ。
10月30日。
毎年お祝いしてきて、今年はもう何年目だっけ。
「あ、もう終わっちゃってる」
時計を見ると、もう0時を回ってる。
31日になってしまった。
「なんか寂しいね」
「が寂しがるの?」
「変?」
自分の誕生日じゃないけど、なんとなく寂しい。
また来年だ。
「いや、喜んでくれて嬉しいなって」
「だって辰也が生まれた日だよ。嬉しいよ」
そう言うと辰也は穏やかに笑って私を抱き寄せる。
辰也の生まれた日。
すごく、大切な日だ。
「…」
「ん…」
「ねえ、Trick or Treat?」
辰也の腕の中で目を瞑っていたら、突然降ってきた言葉。
え。
「え、な、なにいきなり」
「いや、31日になったからさ」
「そ、そうだけど…」
「お菓子くれる?」
辰也は私の唇をなぞる。
辰也の言うお菓子はケーキやスナックの類ではない。
「じゃあ、いただきます」
「わー!待って待って!」
慌てて辰也を制止する。
「ちょっと疲れた」って言ったじゃない…!
「辰也、あの、ほら、ちょっと疲れてまして」
「今日は特別って言ったよ」
「それは30日の話!」
「さっき言ったときはもう今日になってたから」
辰也は満面の笑みでそう言う。
俗に言う、「いい笑顔」だ。
「ちょ、あの、辰也」
「素直に食べさせてくれないなら悪戯になるけど」
「え、あの」
「ああごめん。悪戯のほうがよかった?」
「そういう話じゃない!」
辰也はまったく耳を傾けてくれない。
いや、ほんとね!?昨日もあれだったし、さすがにね!?
「どっちがいい?」
「ど、どっちって、結局すること変わらないじゃない…」
「変わるよ?」
辰也は今までで一番「いい笑顔」をする。
あ、まずい。
私、今、絶対墓穴掘った。
「じゃあ、どっちも試してみようか」
私、明日、起き上がれないかもしれない。
覆いかぶさってくる辰也を見てそう思った。
もう、10月の終わりは、毎年こんな感じです。
どっちがいいの?
13.10.31
ハッピーハロウィーン!!
一応昨日の誕生日夢のそのまま続きと言うイメージです
相変わらずな二人です
氷室祭りこれにて終了です!
お付き合いくださりありがとうございました〜!
感想もらえるとやる気出ます!
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