3月というと春の印象が強いけど、まだまだ寒い。
特に秋田はまだ冬の様相だ。
「寒…っ」
学校から一歩外に出ると、冷たい風がぴゅっと吹き付けた。
思わず身を縮こまらせる。
「寒いね」
辰也はすっと私の傍に寄ってくる。
ちょっと歩きにくいぐらい近くに。
「辰也、寒いの苦手だよね」
「うん…寒いのはあまりね」
辰也はため息を吐いて私と手をつないだ。
辰也の手は冷たい。
私の手もそんなに温かいわけじゃないけど、辰也に比べればずっと温かいから、いつも辰也の手をぎゅっと握って温めてあげるのだ。
「ロスは温かったからな」
辰也がぽつりとつぶやいた。
辰也が長くいたロサンゼルスは温暖な地だ。
この秋田のように連日雪が降るなんてことはまずあり得ない地。
辰也の瞳が、少し郷愁に揺れていた。
「た、辰也!」
慌てて辰也の名前を呼んだ。
辰也がどこかに行ってしまう。
そんな気がしてしまって、怖くなった。
「どうしたの?」
「あ、えっと…」
辰也が黙ってどこかに行くわけない。
それはわかっているけど、少しだけ不安になる。
「…なんでもない」
「?…そう?」
「うん」
そう言って強く辰也の手を握った。
辰也の手を温めるように。
*
「今日も寒いね…」
また次の日の帰り道。
今日は昨日より気温が低いらしい。
辰也と身を寄せ合って温め合う。
「そういえばアレックスから連絡が来てさ」
そう言って辰也は鞄から携帯を取り出す。
画面を少し操作して私に見せてくる。
「にもよろしくってさ。ほら」
辰也の携帯にはアレックスさんと小さな子供たちが写っている。
アレックスさんはアメリカで子供たちにバスケを教えているらしいから、その光景だろう。
「ふふ、結構マメに連絡来るの?」
「いや、アレックス適当だからあんまりね」
そう言いながら辰也は写真を見直す。
ぽつりと、小さな声で呟いた。
「温かそうだなあ」
その言葉に、きゅっと胸が痛んだ。
「た、辰也!」
ぎゅっと辰也の服の裾を掴んで、辰也を見上げる。
私の必死な表情を見て、辰也は心配そうな顔をする。
「あのね、秋田はロスより寒いかもしれないけど、私辰也が寒かったから温めるから!」
辰也の顔をじっと見つめてそう言う。
ロスで過ごした時間が長い辰也にとってこの秋田の地は寒いかもしれないけど、辰也が寒いと感じたら私がいつでも温める。
だから。
「だから、あのね…」
「そうだね」
私の必死の表情を見て、辰也は宥めるように微笑んだ。
「オレは温かいところ好きだから、いつもがいるところにいたいな」
辰也が私の頬を優しく撫でる。
嬉しくなって、ぎゅっと辰也に抱き付いた。
「絶対だよ!」
「もちろん」
辰也は私を抱きしめ返す。
温かいものが胸に広がっていく。
「の傍が、一番温かいんだ」
ひだまり
15.03.24
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