2学期が始まってすぐの今日、私は隣りの席の財前と一緒に日直だ。
日直と言ってもそんなに仕事があるわけではないので、後は私が黒板をきれいにして、財前が日誌を書き終えれば終了だ。
まだHRが終わって間もないというのに、廊下から数人の声がまばらに聞こえるだけで、教室内には私と財前しかいない。

「ふう、これで完了!」

黒板消しを置いて黒板を眺める。うん、我ながら綺麗!
普段は結構大雑把なんだけど、こういうところでは何故か几帳面になってしまう。

「財前、日誌あとどんくらい?」
「もうすぐ」

その言葉を聞いて私は財前の前の席に座って、その様子を眺める。
財前は日誌にすらすらと綺麗な字を並べていく。

「…何?人のことじろじろ見て」
「え?ああ、ごめん。財前ってかっこいいなあと思って」
「はあ?」

日誌を書く手を止めてぽかんと私を見つめている。
そりゃ、財前はモテるほうだけど、同学年の女子から直に「かっこいいね」なんて言われたことはあまりないだろう。
私はあんまりそういうこと気にしないで言ってしまうんだけど。

「お前いきなり何言うとんねん」
「いや、そう思ったから言っただけなんで」
「…そら、おおきに。も可愛いと思うで」
「あははっ。惚れるなよ?」
「もう惚れてるんやけど」
「あはは…は?」

冗談で言ったつもりが思ってもみない返しをされてしまって、今度は私が財前をぽかんと見つめている。

「…いや、それ、もしかして冗談とかそういった類の話ですか?」
「そう思うん?」
「…思いません」

「で、どう?」
「どうってその」
「惚れてんのは俺だけかっちゅー話」

目のやり場に困った私は視線を下に移した。
財前はいつの間にか日誌を書き終えていたらしく、いつの間にか日誌を閉じている。

「…財前ってかっこいいね」
「惚れるなよ?」
「もう惚れてます」
















惚れるなよ?
09.09.12




財前に「もう惚れてるんやけど」って言わせたかった