あ、利央くんだ。そんな声が聞こえて、オレは顔を上げた。ちなみに今オレはロッカーの前で小銭をばらまいてしまったのでそれを拾っています。利央くん、と言ったのはさんだ。後ろには準さんもいる。さんは準さんの彼女であり、すごく可愛い人です。顔が特別可愛いって言うより雰囲気が可愛いっていうか。準さんいいなあこんな彼女がいて。
今日部活はミーティングだけだからさんは準さんのこと待ってるんだろうな。いっそのこと野球部のマネージャーやったらどうっすか?と一回聞いてみたけど「準太がいるからって入ったら、他の人に失礼でしょ?」と言われた。確かにその通りなんだけど、さんが入ってくれたら多分先輩マネージャーたちも大分仕事楽になると思うのに。

「小銭落としたのか?」
「そーなんス…」
「バッカでー」
「どうせバカです…」

準さんはオレをからかいつつ、さんは笑いつつ拾うのを手伝ってくれてる。ていうかなんだってこんな小銭が財布から溢れかえってるときに小銭落としちゃったんだろう、オレのバカ!

「利央くんて可愛いよねえ」

一人涙目になっていたら、さんはふんわり笑いながらそう言った。すいませんオレ一応男なんで可愛いと言われても嬉しくないんですけど!そう言おうとしたけどそんなこと言ったら準さんに怒られるのは明白だからやめておいた。ほら、今も準さんがこっちを睨んでる。すいませんオレ何にもしてないんですけど!さんからこっちに来たんです。ていうかさんが準さんにべた惚れなのわかってるでしょ!だからお願いですから睨まないでください。オレ別にさんのこと好きじゃありません。いや好きは好きだけどそういう好きじゃありません。オレが好きなのはいつも試合の応援に来てくれる2組の子です。名前もわからないけどオレが好きなのはその子なんでさんに手を出そうなんて微塵も思ったことはありません。だから睨むのはやめてください。

「私利央くんみたいな子ども欲しいなあ」
「子ども、っすか?」
「うん。利央くんは私みたいなお母さんじゃ嫌?」
「嫌じゃないっス!寧ろ大歓迎!」

オレは思わず万歳をしながらそう言った。だってだって、さんみたいなお母さんとかすっごくいい気がする!本当のお母さんが嫌いとかそういうんじゃなくて、さんがお母さんとかなんかすっごくいい!

「オレ利央みたいな子どもいらねー」

そんなオレの思いを吹っ飛ばすように準さんは言った。準さんひどいですオレはこの万歳をどうすればいいんですか。

「えー、利央くんみたいな子どもだったら絶対可愛いよ!」
「オレは迅みたいなほうがいい」
「じん?」
「あー、野球部の一年。利央より100倍くらい素直で可愛い」
「へえ、見てみたいなあ」
「利央みたいなのより迅みたいな子産んでくれよ」

準さんひどいです確かに迅はいいやつだけどオレみたいな子だって産んでみてください。
ん?つーかあれ?あまりにも普通に話が進むから考えなかったけど、なんかおかしくない?オレはさんの子どもになるのであって準さんの子どもになるんじゃありません。そりゃここでさんがお母さんでお父さんは他の人になったらおかしいけどさ、でも、何で普通に準さんがお父さんなんすか!

「あの、二人は結婚するんすか?」

そう言ったらさんと準さんは赤くなって顔を見合わせた。

オレは今日、もう二人は結婚しちゃえばいいと思いました。















恋する遺伝子
08.01.07




久々にバカップル的なの書いた気がします。
利央と名前もわからない2組の子の話 を 書きたいな ー なんて…。