「寒…っ」

11月22日。秋田は雪も降りすっかり冬の様相だ。
登校中の生徒たちも皆身を縮こまらせて寒さに耐えながら学校までの道を歩いている。

「あ、ちんだー。おはよ」
「あ、敦。おはよう」

後ろからぽんぽんと肩を叩かれたと思ったら、そこにいたのは敦だった。
去年まで東京にいた敦にこの寒さは堪えるようで、ぶすっと顔を顰めている。

「はあーあ、寒すぎじゃない?なんでこんなとこに人住んでんの?」
「あはは、住めば都って言うけどまだ慣れない?」
「寒さだけは慣れる気しない」
「ふふ、もうすぐ12月だしね…」

12月になれば本格的な冬がやってくる。
今ですら寒いのに、これ以上寒くなると敦はどうなってしまうのだろうか。

「あー、そっか。今日11月22日?」
「うん、そうだよ」
ちんと室ちんの日だね」
「え?」

11月22日が私と辰也の日とはどういうことだろうか。
私と辰也の誕生日は違う日だし、何より「二人の日」という言い方は誕生日を指しているものではない。
首をかしげていると、後ろから聞きなれた声がした。

、アツシ、おはよう。固まってどうしたんだ?」
「辰也」

くるりと後ろを振り向くと、やはりそこにいたのは辰也だ。

「今日はちんと室ちんの日だねって」
「オレたちの日?」

敦の言葉に、辰也も私と同じく首を傾げる。
やはり辰也も心当たりはないようだ。

「11月22日だよ?二人ともわかんないの?」
「う、うん。何かあるの?」
「いい夫婦の日じゃーん。二人ともバカ?」
「え…」

敦の言葉に、かあっと顔を赤くした。
いい夫婦の日って、私たちは夫婦ではない。いや、夫婦になれたらいいなと思うけど、まだ高校生だ。

「もう夫婦みたいなもんじゃん」
「そうだね」
「辰也!?」

辰也が敦に即同意するので、慌てて声を出す。
すると辰也は優しく微笑んだ。

「だっていつかそうなるのは確定だろ?」
「え…」
「違うの?」

戸惑っていると、辰也はしょぼんと眉を下げてしまう。

「違わない!」

決して違わない。
私だって、いつか結婚するなら辰也がいい。
いや、辰也と結婚したと思っているのだ。

「だろ?」
「うん!」
「よかった。アツシもいいこと言うな」
「でしょ〜?」

敦はへらっと笑ってみせる。
いい夫婦の日が私たちの日なんてちょっと照れくさいけど、すごく嬉しい。







いい夫婦の日
15.11.22

リクエストの甘々氷室でした!ありがとうございましたー!







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