「ねえ大我、この台詞読んでみてくれない?」
「あ?」

そう言って大我に複数のメモを渡す。
そこに書いてあるのは英語の文章。

「なんだこれ?」
「いや〜実は演劇部の友達に助っ人頼まれちゃって」
「お前が?」
「まあセリフは少ないんだけど、英語の先生役だから英語のセリフがあって、本場の発音を教えてもらいないなあ、と」
「へえ、大変だな」

英語のセリフはあるけど、あくまで助っ人だしカタカナ発音で全然構わないとは言われている。
でも、助っ人とはいえ帰宅部で毎日暇してる私としては出来る限り協力したい。
それに、こういう名目があるなら、大我に普段言ってもらえないようなことも言ってもらえるんじゃないかと。
そう、半分は下心です。

「結構セリフあんじゃん」
「…まあ」
「…って」

大我は一つのメモを見て顔色を変える。

「なんだこれ」
「…えー?」

大我は私に一つのメモを突き付ける。
それは、「I love you.(心を込めて!!)」と書かれているメモ。

「ほら、私を助けると思って言ってくれないと!」
「いや、これ脈絡なさすぎんだろ!なんで「Is this a pen? No,it's a window」とかの中にこれがあんだよ!?」
「それは脚本書いた人に言ってくれないと」
「…これ、お前が勝手に書いただろ」

う。

「…ソンナコトナイデスヨ?」
「オレの目を見て言え」
「…すみません勝手に書きました」

くそ…っバカガミのくせにどうしてこういうときは勘が鋭いんだ…。

「バカなことしてんなよ」

大我はため息を吐きながら私の頭を小突く。

「…だって」
「?」
「…言ってほしかったんだもん」

そう、言ってほしかったのだ。
せっかく恋人同士なのに、大我は本当に帰国子女なのかと問い詰めたくなるぐらいに奥手というかシャイというか。
たまには愛の言葉を囁いてくれたっていいじゃないか。

「……」
「…おい」

大我はしゅんと落ち込む私の頭をポンと叩いた。
私は顔を上げる。

「…あー…」
「……」

大我はちょっと顔を赤くして、私から視線だけ逸らす。
こ、これはもしや言ってくれるのか。
ドキドキしながら大我の言葉を待つ。

「……あー!」

大我はもう一度そう叫ぶ。
その直後、唇に柔らかい感触が。

「!」
「…これでいいだろ」

大我は、さっきより顔を真っ赤にして、今度は視線だけでなく体ごとあっちを向いてしまう。
だから私は、背中から抱き着いた。

「私も好き!」
「…おー…」

ああもういいや。
そんなところも好きだから!



ちなみに演劇部の助っ人は、全部カタカナ発音で済ますことになりました。








I love you.
13.05.29

帰国子女のくせにシャイな火神と、シャイそうに見せかけて帰国子女らしく恥ずかしい台詞バンバン言ってくる火神どちらが好みですか
私はどっちも好きです

氷室のLesson1書いたときに思いついたネタです
帰国子女に英語教えてもらうのはロマンです!





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