今日は卒業式だった。
式が終わり、クラスや部の人たちと話したり別れを惜しんだ後、学校から出た。
これからクラスでファミレスを借りて打ち上げをする。
それまでみんなは家に帰ったり学校に残って時間を潰したりしているようだ。

私は、千尋と二人で公園に来ていた。

「あっち、行かなくていいの?」
「別に」

バスケ部はバスケ部で固まって盛り上がっているようなのに、千尋はそこには行かなかった。
レギュラーだったんだし、行けばいいのにと思うんだけど。

「行ってほしいのか?」
「最後なんだし行った方がいいんじゃないのとは思うよ。私とはこれから先も一緒にいられるでしょ」
「……」
「ちょっと、なによその間は」
「変な奴だと思っただけだ」

千尋は空を仰ぐ。

「なんでオレみたいなのと一緒にいるんだ」
「一緒にいたいからよ」

千尋がそう言うので、間髪入れずにそう言った。
千尋はときどきそう言うことを言う。
付き合いだした当初は、不安なんだろうと思って優しく答えてきた。
だけどだんだん面倒になって来た。もうわかっているだろう、と。
何度も何度も答えてきて、私はそんなに信用ないのかと苛立ったりした。
最近になって、なんとなくわかってきた。
私との付き合いが不安なのではなく、自分自身のことが不安なんだろう。
自分のことが好きなくせに、そういうところ、とても、

「本当に変な奴だな」
「そんな変な奴と付き合ってるくせに」
「……」

そう言えば千尋は黙る。
まあ、仕方ないことかなとも思う。
バスケ部であんな化け物みたいな人たちの中にいたんだから、多少、自分に自信がなくなっても。

「私は千尋のこと好きよ」
「なんだよ、突然」
「好きだから一緒にいたいと思うんだよ。好きな理由も言おうか?」
「いや、いい」
「いいの?」
「いつも聞いてる」
「千尋が千尋だから好きなのよ」

いつもの言葉を言えば千尋は少し顔を赤らめる。

「他の誰でもない、千尋が好きよ」

誰かの代わりではない、誰にも代えられない、彼が好き。

「…だから」

千尋は今度は下を向く。
そして小さな声で呟いた。

「ここがいいんだ」

俯いた千尋の頭を撫でる。

「クラスの集まりはどうしよっか」
「行かない。別にいいだろ、未練もない」
「そ」
「撫でるのやめろ」
「なんで?」
「なんかムカつく」

そう言われたので渋々手を引っ込める。
撫でるの、好きなんだけどな。

「…千尋」
「ん?」
「誕生日おめでとう」

そう言って彼の頬にキスをした。
他の誰でもない、千尋の生まれたこの日が、嬉しいよ。











イミテーションはいらない
14.03.03




感想もらえるとやる気出ます!