「お腹空いたな」
「そうだね」

辰也の部屋でまったり中。
お腹が空いてしまった。

「何か買ってくる?」
「いや…、何か作ろうか」
「えっ?」
「?」
「作るって…辰也が?」
「うん」
「………」

辰也が料理できるなんて知らなかった。
意外というか、なんというか。

「辰也、料理できるんだ」
「まあ、少しね」
「…意外」
「そう?」
「第一印象なら作れそうだけど。実は結構ガサツだし…」
「ひどいな。まあ、その通りだけど」

意外と言ったら失礼だけど。
最初、辰也に会った時はなんでもできそうというか、そういうタイプに見えたんだけど、
実際仲良くなってみれば意外と面倒くさがりだしガサツだし。
料理が出来そうには見えない。

「チャーハンとか、簡単なものしかできないよ」
「……」
?」
「…私、できないもん」
「?」
「…料理、できない」

そう、私は料理ができない。
できないと言うか、したことがない。
普通に食事の時間になればお母さんがご飯を用意してくれるし、周りもできる子いないし、
だからやろうと思ったことがそもそもなくて、それを気にしたこともない。

でも、彼氏が料理できるとなれば話は別だ。
彼氏が料理できるのに彼女ができないなんて、そんなのって。
それってなんか…なんかよくないというか。

「別に気にしなくても」
「気になるよ!」
「高校生なら普通できない子の方が多いだろうし」
「彼氏ができるのに彼女ができないっていうのはよくないと思う!」

そう言うと辰也は笑った。

「ひどい!」
「いや、ごめん、ついね。じゃあ、一緒に作ろうか」
「え?一緒?」
「うん」

そう言って辰也は私の手を取ってキッチンへ向かう。
冷蔵庫を開けてテキパキとチャーハンの準備をする。

…本当にできるんだ。

「じゃあ、ネギとかニラとか切って」
「は、はい」

別に包丁を持ったことがないわけじゃない。
切るくらいなら私もできる。できるはず。

「……」
「……」
「…た、辰也」
「ん?」
「あ、あんまり見ないで…」

いざ包丁を持つと、辰也が後ろからじっと見つめてくる。
そんなに見られると、恥ずかしい。

「いや、心配でさ」
「見られると緊張しちゃうよ!」
「ちょっといい?」

そう言うと辰也は私の背後に回る。
そのまま抱きしめるようにして、私の包丁を持つ手を取った。

「!?」
「ああ、動かないで。切るときは、こう」

体を強張らせていると、辰也は言葉の通り手取り足取り包丁の使い方を教えてくれる。
くれるけど。

「そう、ゆっくりね。丁寧に」
「た、辰也」
「ん?」
「そこでしゃべられると、あの」

後ろから抱える形だから、辰也の息が私の耳にかかる。
その上、体も密着しているものだから、その。

「変な気分になる?」
「ひゃっ」

辰也に耳を舐められる。
ちょっと、これ、本当に。



辰也は私の手をから包丁を奪って、キスをする。

「た、辰也、ご飯は…」
「後でいいだろ?」
「お腹空いたって、言ってたのに」

キスの間、途切れ途切れに伝えるけど、反論は意味をなさない。

「だから食べたいんだ」
「!最初からこれ狙ってたの…?」
「いや?」

辰也は私のエプロンを触る。

「彼女が台所に立つ姿って、想像以上にいいね」

そんなことで毎回欲情されたら、私一生辰也の前で料理できないんじゃないか。
火照る頭でそう思った。










in the kitchen
14.05.04

天瀬さんリクエストの室ちんと一緒に料理していちゃつく話でした〜
ありがとうございました!






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