さて、今日の授業も終了。
帰ろうか、と思って下駄箱を覗くと見慣れない封筒が。

「…?」

なんだろう、と思ってすぐ、もしかして、と思う。
いやいやいや、ありえない。うん、まさか私が…。
違うって、違う。うん、違うよ。

誰に言っているのか、心の中でそう思いつつ封筒を開ける。
そこに書いてあったのは、知らない男の子の名前と、クラス、「一目見たときからずっと好きでした」と言う言葉。
これはまさに…

、今帰りなん?」
「うわああっ!!?」

後ろから聞こえてきた声に思わず大声を上げる。

「お、おお。なんや、そないに驚くもんか?」
「あ、し、白石。うん、いや、ちょっとぼーっとしてて」

さっと鞄の中に封筒を入れる。
まさかこんなタイミングで白石が現れるとは。
白石には、白石だけには見られるわけにはいかない。

「?、なんか落としたで」
「え、」

白石が拾ったのは一枚の便箋。
間違いない。それは、封筒の中身。

「ちょ、ちょっと待って!!」
「…はい」

白石は気まずそうにそれを私に渡した。
その表情から、彼が中身を見てしまっただろうということがわかった。

「あ、あの…見たよね?」
「いやいや、見てへんで」
「できれば本当のことを言ってもらいたいです」
「…はい、見えました。スマンな」

申し訳なさそうに白石は言う。

「いや、謝らなくていいよ、私が落としたんだし。うん、別に」

しどろもどろ、うまく話せない。
だってしょうがない。相手が白石じゃなきゃこんなふうにならない。
どうしてよりによって…。

「ホンマ、スマンな」
「だから、いいって。まあ、ちょっと恥ずかしいけど」

白石から渡された便箋を封筒の中にしまう。

「…どないするん?」
「え?」
「返事」

意外な言葉に驚く。
白石はこういうことにはあんまり突っ込んでこないと思ってたけど。

「ま、まあ、断るよ。だって、知らないもん、この人。話したこともないし」
「ああ、そうなんや」

私はこの人を知らない。
多分、相手も私のことをほとんど知らないんだろう。
文面からも、そのことが窺える。
一目見たときからってことは、一目惚れとかなんだろう。

「一目惚れなんてありえないよ」

だって私が目の前にいる人を好きなのは、優しくて、しっかりしてて、ちょっとずれたところもあるけど一緒にいると楽しいから。
見た目だけで好きになったなんて、そんなのなんか違う気がする。

「オレはあり得ると思うけどなあ」
「白石って面食いなの?」
「ちゃうちゃう、顔だけやなくてなんちゅーの、雰囲気含めて好きになることならあるんちゃうの」
「…ふーん」
「だってオレに一目惚れやし」
「…ふーん、って、ええっ!?」

い、今、一体何を

「最初に見たときなんかええなあって思て。でもそれだけやないで。今は優しくてしっかりしてて、明るくて一緒におると楽しいところとか、まあ、とどのつまり全部好きやねん」

白石は軽く言っているけど、真剣な目で冗談ではないことがわかる。
そもそも、白石がこんなこと冗談で言うはずがない。

「で、どうなん?」
「え、な、何が」
「いやいや、オレ一人に語らせて終わりはないやろ」

ああ、そうだ、そう。

「…私は一目惚れじゃないもん」
「うん」
「一目惚れじゃなくて、いろいろあって、それで今、白石のこと全部好きだよ」

そう言うと、白石は優しく笑って「一緒やな」と言った。


















一緒だね
12.08.28