隣にはいつも君が居て そんな日々が当たり前だと思っていたのに いつかきっと 君の隣に 「赤也ー何やってんの?」 夜の9時、外から何か音がする。玄関から外に出て、その音を確認しようとしたら、そこには赤也がいた。 「見りゃわかんだろ」 「素振り?」 「そう」 「へー、赤也って結構真面目なんだね」 赤也は私の家の隣に住んでて、所謂幼馴染ってやつ。小さな頃から一緒にいて、赤也の面倒見るのはいつもあたし。 「勉強にもそのくらいの情熱が持てればいいのにねー」 「うるせっ」 「教えるほうの身にもなってよね」 「いつも感謝してますよー」 「感謝があんまり感じられないんだけど…」 そんなところは、赤也は昔と変わらない。だけど、ほとんどの部分が昔とは違う。昔はあたしのほうが背も高くて力も強くてかけっこだって速かったのに、いつの間にか全部抜かされた。 悔しい、というより寂しい。赤也は全国で優勝するほどのテニス部のレギュラー。あたしはただの帰宅部員。赤也は普段の部活の練習に加え、こうやっていつも練習してる。一方のあたしは学校が終わったら友達と遊んで、家に帰ったらテレビ見て雑誌読んで眠るだけ。 いつの間にか、赤也は一人で大きくなっていた。 「?」 「え?」 「何かボーっとしてたけど?」 「赤也と違って悩み事の一つや二つあるんですー」 「じゃあこの赤也様に相談してごらん?」 「ははっ」 「おいおい、真面目に言ったんだぜ?」 赤也は置いてあったスポーツドリンクを一口飲む。 「も飲む?」 「あんたと間接チューなんてしたくない」 「回し飲みぐらい、今さらだろ」 今さらって 今さらってねぇ、こっちはもう小さい頃とは違うっての。 「あ、何?直接したいって?」 「殴っていい?」 「うわっ冗談冗談」 本当は、キスしてほしい抱きしめてほしい。だけど、あたしにはまだ赤也の隣に立つにはまだ足りないから。 バカで、不真面目で、ムカつく奴だけど 真っ直ぐなあなたにいつか追いつくから そしたら全部、私の気持ちも言うから。 それまでこんなふうに、あたしの前から消えないで。 06.05.06 赤也に限らずテニスの子たちは真っ直ぐで眩しいよなぁ と。 |