クリスマスに礼拝堂でキスをしたカップルは永遠に結ばれる 桐青にはそんなありがちな噂がある。ちなみにキスは誰にも見られてはいけないらしい。まあ見られなくてよくても人前ではなんだかちょっと、という感じだけど。だから、クリスマス前はあちこちでカップルがウキウキドキドキ。どうやって見られないようにキスをしようか、何時ごろに行けばいいのか、そんな話が絶えないのだ。だけど、聞いたところによると、この噂は私たちが高校に上がる一年前に、当時の3年生が作った噂らしい。 昨日の夜、友だちから聞いた話を学校に来て、朝一番に後ろの席の島崎に話してみた。一応、この話は私たちの学年では学校創立以来の伝説くらいの勢いで話されている。そんな噂が3年前に作られたものだったなんて、微妙にショックだ。 「なんかそれオレも聞いたことある」 「へえ」 「最初はキスしたカップルじゃなくて、礼拝堂の前で告白して成功したら、だったらしいぜ」 「え、そうなの?」 「クリスマスに告白しようと盛り上がった女子が作ったとかなんとか」 先輩に聞いた話だけど。島崎はそう付け加えた。さすがに先輩に聞いただけあって詳しい。私は部活なんてものには入っていないから、先輩から聞いたりできないし。 「でもそれじゃ、信憑性ないよね。永遠とか言われても、3個上の人が勝手に作っただけなんでしょ?しかも告白がキスになっちゃてるしさ」 「何?お前信じてたの?」 「、別に」 信じてたわけじゃない。だけど、そういうロマンチックな話は、一応女である私にとって、やっぱり少し憧れを抱いてしまう。クリスマス、礼拝堂、キス、永遠に。これだけ女心をくすぐるキーワードが揃ってるんだから。 「じゃあするか」 「は?」 「だから、クリスマスに礼拝堂の前でキス」 「いや、そうじゃなくて誰と?」 「オレとお前」 「あんた熱でもあるの?」 思わず島崎の額を触ってみた。冷え性な私の手よりは熱いけど熱はなさそうだ。じゃあ何でバカなこと言ってるんだろうこいつ。私と島崎は仲はいいけど別に付き合っちゃいない。いくら島崎だって付き合ってもないやつとキスなんかしないだろう。 「熱はねーけど」 「…じゃあ頭変になったの?」 「お前って…」 本当に意味わかってねーのかよ、島崎はそう言って深く溜め息をついた。え、ちょっと、もしかして、さっきの言葉も、その溜め息も、私の好きなように解釈していいの? 「島崎」 「何ですか鈍感なさん」 「クリスマス、楽しみにしてるよ」 とりあえず、どうやって見られないようにキスするか考えようか。 Joy to the world, 07.12.19 準太のHark the glad sound!とリンク 題名はもちろん もろびとこぞりて ていうかこれ慎吾さんなの…? |