「いただきます」

屋上で一人、お弁当の前で手を合わせてそう言う。
友達が用事だったり休みだったりで今日は一人でお昼ご飯だ。
一人でご飯は寂しいと言えば寂しいけど、そこまでじゃない。
一人は嫌いではないし。

「あっ!」

箸を持ってご飯を食べようとすると、後ろから手が伸びてきて卵焼きを持って行かれた。

「ちょっと!」

あわてて後ろを振り向く。

「…やっぱり、花宮…」

私の周りでこんなことするのは花宮ぐらいだ。

「よお、ぼっち飯」
「…ちょっと、みんな部の用事とか」
「知ってるよ」

花宮はそう言って私の隣に座る。
私が一人なのを知って来たのか。
…私に気を使ったわけではないだろうけど。

「なんだこの卵焼き。殻入ってんじゃねーか」
「うっさいわね。ちょっと失敗したのよ」

そう言うと、花宮は目を丸くする。

「…お前が作ったのかよ」
「?うん。一応いつも作ってるけど」
「……」

うちは両親共働きだし、ほとんど毎日お弁当は自作だ。

「ふーん…」

花宮はじっと私を見てくる。
と思ったら、いきなり手に持っていたパンを顔に投げつけてきた。

「わっ!?あ、ちょっと!」

そしてそのまま私のお弁当を持っていってしまう。

「うわ、お前こんだけで足りんのかよ」
「ちょっと、返して!」
「だから成長しねーんだよ」
「うっさいわね!」

私の文句も聞かず花宮はお弁当を食べ始める。
…これは…。

「…ちょっと」
「なんだよ」
「…おいしい?」
「クソ不味い」
「…ですよねー」

花宮が素直においしいなんて言うはずもない。
でも、食べ続けると言うことは、そういうことなんだろう。

「…今度花宮の分作ってこようか」
「いらねー」
「はいはい」

そんなこと言われたって、全部きれいに食べてくれればいい気分になる。
作ってくるときには、殻の入った卵焼きをいれてあげようか。
多分、文句を言いつつも食べてくれるんだろう。















殻の入った卵焼き
13.11.17

お弁当シリーズこれにて終了!
花宮だけヒロインがキャラクターのために作ってきたものではないので、彼を最後にしました

花宮は「ヒロインが寂しそうだからヒロインのところに来た」のではなく
「他の奴の邪魔が入らず二人でお昼が食べられそうだから来た」のだと思います



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