8月2日は大我の誕生日だ。
もちろん私もお祝いするけど、家族が揃うだろう。
大我は一人暮らしだけど、誕生日ぐらい…。
「いや、別に揃わねーけど」
「え」
「向こう仕事だし、こっち来るのも大変だし」
「…寂しくない?」
「もうガキじゃねーし、別に」
大我は表情を崩さずそう言う。
確かに男子ってあんまり記念日に興味ないって言うけど、それでも…。
「…大我」
「ん?」
「誕生日、待っててね!」
*
8月2日。
インターハイの真っ最中だけど、残念ながら行けなかった誠凛バスケ部は夏合宿を終え東京に帰ってきた。
ということで、大我の誕生日祝いだ。
「はい、プレゼント!」
「おお、サンキュ」
大我の部屋で誕生日プレゼントを渡す。
「おお、タオル…しかもすげーいっぱいだな。助かる」
プレゼントはタオルの詰め合わせにした。
お中元みたいに聞こえるけど、決してそういうわけじゃない。
運動部だからたくさん汗かくし、タオルはいっぱいあったほうがいいだろう。
「あとね!もう一個プレゼント!」
「ん?なんだ?そんなにくれんのか。悪ぃな」
「はい!誕生日に家族と過ごせない大我のために!今日一日大我の家族代わりになります!」
大我は目を丸くする。当たり前だ。
でも、やっぱり、誕生日に家族と過ごせないなんて寂しいと思う。
だったらせめて!私が家族になってあげようじゃないか!
「……」
「お母さんでもお姉ちゃんでも妹でもいいよ!お父さんはちょっと無理があるからなしで!家族だと思って甘えてごらん!」
「あ、ああ、そういうことか」
大我は「びっくりした…」と呟きながら少し顔を赤くした。
「?どうしたの?」
「い、いや…別に」
「何よー、気になるじゃない」
大我は照れた顔をして口ごもる。
私は気になって仕方ない。
「いや、別に…その」
「何?」
「…家族っつーから、その、嫁にでもなるのかと…」
よめ。嫁。お嫁さん。
大我の口から出た意外なひと言に、私の思考はフリーズした。
「よ、よめっ!?」
「う、うるせー!」
「だだだだって、大我まだ16だよ!結婚できないよ!?」
「だ、だからなんか今日はそういうふりみたいな…そういうことかと…」
お嫁さん。私が大我のお嫁さん。
そ、そんなの、なんか、それって。
「…お、お嫁さんって、何すれば…」
「え」
そう聞くと大我は顔を真っ赤にした。
「な、なにって…えっと…料理作ったりとかじゃねーの」
「料理…でもまだケーキ食べてもないし…」
「お、おう。じゃあ、何すりゃいいんだ?」
「…なんだろ」
「……」
「…とりあえず、ケーキ食べる?」
「…そうだな」
そう言って、恥ずかしさを堪えながらケーキに手を付ける。
なんだか、思わぬ方向に話が…。
「…なあ、このままでいいんじゃねーの」
「え?」
「無理にふりとかしなくても、その…それっぽいつーか」
大我は真っ赤な顔でそう言う。
それっぽいって、それは。
「……」
ああ、どうしよう。
大我の誕生日なのに、私が嬉しい。
家族になろうよ
13.08.02
火神誕生日おめでとう!
感想もらえるとやる気出ます!
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