楽しい楽しいクリスマス…なんて浮かれていたのは学生時代までの話。
今は地獄のクリスマスだ。

「はーあ…」
「暗いな」

クリスマスイブの朝、大きなため息を吐く。
それを見て一緒に住んでいる千尋が皮肉めいた笑みを浮かべながらそう言ってきた。

「暗くもなるわよ。何時に帰れるかなあ…」

接客業の私はクリスマスは一年で一二を争うほど忙しい日だ。
早めに出なくちゃいけないし、閉店後も明日の準備をしなくてはいけない。
いったい帰れるの何時になることやら。

「ご愁傷様」

千尋が優雅にコーヒーを飲みながら手を振ってくる。
なんかムカつく。そう思いながら家を出た。




「…ただいまー…」

半分屍になりながら帰宅する。時刻はすでに0時を回っている。
千尋はすでにベッドで眠っているので、起こさないようそっと部屋に入った。

「はあ…」

とりあえず床にぺたんと座って、棒になった足を休める。
普段はこの仕事嫌いじゃないけど、今日ばかりはなんでこの仕事を選んでしまったのだろうと後悔する。
カップルが来店するたびに、千尋のことを思い出してしまって少しつらい。

とりあえずシャワーだけ浴びよう。そう思って着替えとタオルを取ろうと携帯を明かり代わりにする。
暗がりに見えるゴミ箱の中には、カップラーメンの容器が捨てられていた。
胸の奥がちくりと痛む。

「…ごめんね」

眠る千尋に呟いた。
恋人がいるのにイブの夜に一人カップラーメンを食べる千尋を想像すると何とも居た堪れない。
千尋も口には出さないけど、寂しいと思っているんだろうか。

頭を振って考えを切り替える。
26日にクリスマスパーティーをやろうと約束している。それを楽しみに明日の仕事も頑張ろう。






「ん…」

枕元でなるアラームによって眠りから覚める。
朝になってしまった。もっと眠っていたかったのに。
そう思いつつ体を起こす。
隣で眠っていたはずの千尋はいない。
洗面所から音がするから、顔でも洗っているのだろう。

「あれ」

枕元に見覚えのない袋が置いてある。
エメラルドグリーンの綺麗なラッピングだ。
どこからどう見てもプレゼント。
この部屋に暮らしているのは私と千尋だけ。つまり、千尋から私への。

胸がきゅっと締め付けられる。
袋を大切に手に取って、ラッピングを開ける。
中には長財布とアイピローが入っていた。
思わず洗面所の千尋のもとへ駆けて行った。


「おわっ!?」

顔を洗っている最中の千尋に後ろから抱き付く。
驚いた声をあげるけど気にしない。

「なんだよ」
「サンタクロースっているのね」

千尋は少し体を強張らせる。
どんな表情をしているかは見えないけど、何となくわかる気がした。

「…いねえよ」
「いるよ。背の高いサンタクロースが」











恋人がサンタクロース
14.12.24

メリークリスマス!








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