「…よしっ」

家を出る前、全身鏡でもう一度身だしなみのチェック。
うん、大丈夫。おかしなところはないはず。

「行ってきまーす」

大きな声で叫んで、待ち合わせ場所に向かった。
今日は氷室と待ち合わせ。
デートなんて色っぽいものではなく、単純に部の買い出し。

普段は部活の最中に行っていたけど、ここのところ忙しくて行けずにいたので、休みの日に行ってしまおう。
昨日そんな話をたまたま氷室にこぼしたら、「一人じゃ大変だろうから一緒に行こうか」と言ってくれたのだ。
ずっと買い出しに行っていなかっただけあって確かに荷物は多くなる。だから手伝ってくれるのは、とても助かる。
でも、それだけじゃなくて、まさか部活のない日にも氷室に会えるとは。
名目は部活の買い物だけど、休みのに日に私服で二人で会うなんて、ちょっとデートみたい。
ただの買い出し。わかってるけど、どうしたってドキドキしちゃう。
心が弾むのを抑えられないまま、待ち合わせ場所の駅に向かった。





待ち合わせ場所に着いて、辺りを見渡すとすでに氷室の姿が。

「ごめんね、待った?」
「ううん、今来たところだから」

おお…!なんかデートみたいな会話だ…!
と、とりあえず落ち着こう。うん。

「じゃ、じゃあ行こうか」
「?、顔赤いよ」
「えっ!?」

氷室は心配そうにそう言うと、私の額に手を当てる。
え、ええええ!?
そんなことされたら、そりゃあ赤くなる!なっちゃうからちょっと待って…!

「熱はない?」
「な、ないと思う…から、手…」

手、どけてくれないとますます赤くなります…!

「…また赤くなった」
「だ、だって…」
「どうしたの?」

氷室はさっきまでと違って、少し楽しそうな声でそう言った。
いや、あの、ちょっと…。

「ねえ、今日の服、すごく可愛いよ」
「えっ!?」

いきなり何の話!?
いや、頑張って選んだ服だし嬉しいけど!

「あの、氷室…」
「ねえ、
「は、はい」

氷室は私の顔を覗き込む。
ち、近い。

「そんなに可愛い格好で、こんなふうに赤くなってたら、期待しちゃうよ」

期待、って。
目を丸くしていると、氷室が少し笑った。

「オレが、なんとも思ってない子の買い物に付き合うと思う?」
「え…」
「下心があるから、今日来たんだよ」

顔がどんどん赤くなっていくのを感じる。
私はもう、今日死んじゃうかもしれない。


「は、はい」
「下心があるのは、オレだけ?」

氷室は少し首を傾げてそう聞いてくる。
そんな顔、反則だ。

「…わ、私も、同じです…」
「よかった」

氷室が、私と、同じ気持ち。
うわ、涙が出そうだ。

「じゃあ、どこ行こうか」
「え?買い出しじゃ…」
「恋人同士が休日に一緒に出掛けて、することが部活の買い出し?」
「あ…」
「荷物になるから、買い出しは最後にね?」
「う、うん…」
「…いや、やっぱり出かけるの止めない?」
「え!?」

氷室は私の髪を梳くと、甘い声で囁いた。

「だって、こんな可愛い格好、誰にも見せたくないよ」

ああ、やばい、本当に熱が出てきたかもしれない。










恋の病
13.02.05

キリリクユウさんへ!
氷室と待ち合わせする話でした
ユウさんありがとうございました!




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