「ん…」
まだ外が薄暗い中、辰也のベッドの中で目を覚ます。
横で眠る辰也はぐっすり眠っているようだ。
「…辰也…」
寝返りをしたんだろう。
くっついて眠っていたはずなのに、辰也が少し遠い。
体をもぞもぞと動かして、辰也の隣に戻った。
「……ふふ」
辰也の隣に自分の体をおさめる。
綺麗にすっぽりとおさまるものだから、辰也の隣は初めから私のためにある場所なのかなと錯覚しそうになる。
近くなった辰也の顔を見つめる。
辰也の顔はきれいだ。
美人は3日で飽きるなんていうけど、いつまで経っても私は辰也に夢中だ。
「ん…」
眠る辰也が息を漏らす。
自然と目線が口元に移動する。
ドキドキと、心臓の鼓動が高鳴る。
夜明け前の静寂の中に、響きわたってしまうんじゃないかと思うほどに。
「……」
吸い込まれるように、辰也に顔を近づける。
辰也に唇に自分のそれを優しく触れさせた。
キスをする度に思う。
私と辰也の唇は、くっつけるととてもぴったりで、生まれたときからからキスするためにこの唇はあるんじゃないかと。
そんなはずないとわかっているけど、でも、そうだったらいいなと思う。
「わっ!?」
キスの余韻に浸っていると、私の背中に辰也の腕が回る。
辰也の両眼はぱっちり開いている。いつの間に起きたんだ。
「…起きてたの?」
「プリンセスのキスで起きたよ」
起き抜けから辰也は相変わらずだ。
起きたばかりで低かった体温が上がる。
「も、もう…」
「……」
辰也はじっと私を見つめてくる。
どうしたんだろうと思って見つめ返した。
「辰也?」
「の唇は可愛いね」
辰也は私の唇を指でなぞって、キスをする。
触れるだけの優しいキス。
やっぱり、私と辰也の唇はぴったりだ
「ぴったりだ」
辰也が微笑んでそう言う。
嬉しくなって私も笑った。
「私もね、同じこと思ったの」
そう言うと辰也は嬉しそうに笑う。
「最近二人の笑い方似てきたね」と友達に言われたのを思い出す。
生まれたときからぴったりなのか、たくさんキスするうちにそうなったのか。
どちらでもうれしいな。
「同じだね」
「うん」
辰也にぎゅっと抱きつくと、辰也も私の背中に回した腕を強める。
この腕の中も、私の体にぴったりだ。
君のための唇
14.10.01
今年も10月は氷室祭り!
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