赤也は小さい頃ヒーローものが大好きで(もしかしたら今もかもしれないけど)、幼馴染の私はしょっちゅう一緒にそれらを見てた。
世界を救うヒーローはとってもかっこよくて、赤也の横で見ていただけの私も、すっかりヒーローに心を奪われた。


だけど、それは今となって昔の話。ヒーローがいるなら今は世界より宿題に苦悩する私を助けてほしいものだ。
正確には、宿題に苦しむ赤也を手伝う私を、だけど。

「あ…あいぷれいてにす…?」
「…あんたそんな基本もわからないの」

日曜の夜、毎日部活で忙しい赤也はその週に出た宿題をこの時間にいっぺんにやっつける。
もっとも、それは私がいなければ到底できることではない。

「先輩たちは同じ練習してるのに頭いいんでしょ?なんで赤也だけそんなバカなの?」
「うるせえバカ!バーカバーカ!」
「はいはい、そんなバカに勉強教えてもらってるのは誰ですか」

そう言うと赤也は次の言葉がもう出てこない。語彙が少ないから、昔から口喧嘩が弱いんだ。

「あーあ、朝起きたら宿題終わってねーかな…」
「それはないはね」
「じゃあさー、なんかどっかの星から悪い奴がやってきて、学校を壊したりとか…」
「…赤也、あんた14歳になったんだよね?」

思わず赤也の額に手を当てて熱を測ってみたけれど平熱のようだ。
小さい頃あれだけヒーローものを見てたんだから、心の底にそれがまだ残ってるのか。

「まあ悪い奴が来ても、俺がヒーローになって助けてやっから大丈夫だ!」

私の心配を他所に赤也はヒーローについて話し出す。
まあ、いい加減宿題と睨めっこするのは疲れてきた、ここは赤也の話題に乗って一息つこう。

「赤也は昔からヒーローになりたがってたねえ…やっぱりかっこいから?」
「あったりまえだろ!かっこいいぞヒーロー!」
「赤也に世界が救えるの?」
「んなもんわかんねーけど。まあ、とりあえずのことは守ってやるから安心してろ!」

赤也はキラキラした、子供みたいな純粋な笑顔でそう言った。
私を守るっていうんなら、とりあえず目の前にある宿題を一人でできるようになってほしいんだけど。


世界を救うヒーローに心を奪われたのは昔の話。
今では寧ろ私に助けられてる赤也のことを好きになっているのだから、世の中まったくわからない。













ラストヒーロー
08.10.05

遅ればせながらハッピーバースデー!