「ううーー…」
「唸ってないで、はい。次の問題」
「頭が痛い…」
目の前に並んだアルファベットに頭が痛くなってくる。
大嫌いな英語。それを克服しようと同じバスケ部の氷室に頼ったのだ。
ほんの少し、ほんの少しだけ、下心を持って。
「英語嫌い。もうやだ」
「はいはい、大丈夫だから」
「うう…」
帰国子女の氷室。
彼に教えてもらえば私も少しは英語が上達すると思ったのだ。
でも、その考えは甘かった。
私が淡い想いを寄せる氷室。
そんな人に教えてもらって、大嫌いな英語に集中できるはずがない。
「」
「…はい…」
「集中してる?」
「………」
「こら」
「ご、ごめんなさい…」
ごめんなさいごめんなさい!
でも、無理に決まってる。
部室で二人きり。それだけでこんなにドキドキするのに。
隣に座って、私のために時間を使ってくれている。
それが嬉しくてたまらなくて、英単語が一つも入ってこない。
でもダメだ。「教えてほしい」と頼んだのにこんな態度、氷室は呆れるに決まってる。
「、そんなに英語嫌い?」
「う、うん…」
「…そっか」
氷室は考え込んでしまう。
ああ、ごめんなさい…。
「…外国語を覚える近道って知ってる?」
「え?」
氷室の突然の言葉に目を丸くする。
近道!?そんなのあるのっ!?
「何それ聞きたい!気合と根性!?」
「いや」
氷室は一瞬苦笑いすると、私の髪を梳き始めた。
な、なに、いきなり…。
「ひ、氷室?」
「外国人の恋人を作ればいいんだよ。自分の好きな人の言葉なんだ。頑張って覚えようとするだろう?」
「あ、う、うん…」
確かに聞いたことがあるかもしれない。
しれないけど、この状況に、うまく頭が回らない。
氷室が、私の髪を撫でる感触が、
「氷室、あの」
「オレは日本人だけど、英語喋れるよ」
「は、はい」
「だから、どう?」
どうって、どうって…
何が、どうなの。
「」
「え、あ、はい」
「意味、わかってる?」
「…え、えっと」
氷室はまた苦笑いをする。
「オレと付き合わないかって言ってるんだ」
氷室のその言葉で、私はやっと意味が理解できた。
付き合う、って。
「え、ええっ!?」
「嫌?」
「い、嫌なわけ、ないです!」
慌てて叫ぶようにそう言った。
付き合うって、それは、恋人同士になるってこと。
心臓が爆発しそうなくらい、ドキドキ言ってる。
まさか、英語を教えてもらったらこんなことになるなんて。
「そうか、よかった」
氷室は優しく笑うと、私の耳に触れる。
「じゃあ、早速」
「?」
「英語の授業」
氷室は私を抱き寄せると、耳元で囁いた。
「I love you.」
氷室は「意味わかった?」なんて茶化したように聞いてくる。
英語を覚える前に、私はドキドキしすぎて死んでしまうんじゃないだろうか。
Lesson1
13.05.21
「英語の授業」ってセリフを「英語のレッスン」に最初しようと思ってたんですが
なんかエロ漫画っぽくなるなと思って授業にしました
なんかやらしくないですか …そんなことないですか
感想もらえるとやる気出ます!
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