「はい。ココア」
「ありがとう」

部活帰り、辰也の部屋まで来た。
今日は部活が遅かったからあまり長居は出来ないけど、少しだけね。

「あ、携帯鳴ってるよ」

机の上の辰也の携帯が震える。
辰也は画面を見て、クスッと笑った。

「辰也?」
「アレックスだ。秋田堪能してるみたいだよ」

辰也は親子丼の写った携帯を見せてる。
どうやらアレックスさんが今食べているようだ。

「…楽しそうだね」

ふふ、と笑って見せる。
あまり案内できないけど、楽しそうでよかった。

「…
「ん?」

辰也は私の頭を撫でる。

「…なんだか、元気がない」

そう言われて、目を伏せる。
…やっぱり、わかっちゃうかあ。

「…ヤキモチ」

「ただのヤキモチ!」

ちょっとだけ強い口調でそう言って、辰也にキスをした。


「…ごめんね」
「謝らなくていいよ」

よしよしと頭を撫でられる。
涙が出そうだ。

「…辰也、あのね」
「うん」
「…いっぱい、ヤキモチ妬いてるの」
「うん」

辰也はぎゅっと抱きしめてくれる。
温かい。

「謝らなくたっていいんだ。オレだっていっぱい妬いてる」
「…でも、辰也とは違うよ」

辰也とは違うよ。
だって、いつもも、中山のときも。

「…だって、アレックスさんは、辰也の大切な人でしょ?」

アレックスさんは辰也の大切な人だ。
きっと、とても。

そんな人に妬いてるなんて、なんだか。

「ごめんね、でも、どうしても」
「ううん」
「…私だけでいいって」

上を向いて、辰也にキスをする。
あまり私からはしないけど、でも今日だけはこうしたい。

「…辰也にこういうことするのは、私だけでいいんだよ」

文化や習慣の違いとか、わかってるつもりだけど。
それでも、どうしても嫌だと思ってしまう。
辰也にキスしていいのは、私だけだって、そう思ってしまうから。



辰也はぎゅっと私を抱きしめる。
苦しいぐらい、強く。

「いいんだよ、。もっと話して」
「も、もっと、って」
「もっと話して。の思ってること」

辰也はいつかの私と同じことを言う。
私もギュッと辰也を抱きしめた。

「辰也」
「うん」
「好き、だよ。大好きなの」
「うん」
「私だけでいいの。辰也にキスするのも、全部、私だけがいいの」
「うん」
「…辰也の大切な人だってわかってるけど、それでも、どうしても、嫌なの」

アレックスさんはいい人だ。
彼女が嫌いなわけじゃない。
もっと仲良くなれたらいいなとも思う。

でも、そうじゃない。彼女がどうとかじゃない。
ただ、私が。

「…私だけでいいの」

もう一度辰也にキスをする。
キスした時の、辰也の表情。

「…辰也のこんな顔、私だけが知っていればいいんだよ」

私だけでいい。
私だけなの。
辰也には、私だけでいい。

、いいよ。オレはだけでいい」

今度は辰也からキスをする。
熱いキスだ。

以外、いらないよ。
「辰也」
が好きだよ」
「…私も」

私も辰也が好き、大好き。
辰也が大好きで、苦しくなる。
自分がこんなに嫉妬深いなんて、思わなかった。
辰也を好きな子に対してならまだしも、こんな、


「辰也、もっとして」
「うん」
「もっと、いっぱい」

辰也は優しく抱きしめてくれる。
温かい。
辰也が好き。大好き。

苦しいぐらいに。
ヤキモチ妬いて、苦しくなるぐらい。

「辰也」

涙が零れる。
ダメだな、本当は、もっと明るく話す気だったのに。
想いが強すぎて、軽く表現することもできない。

辰也が、好き。










 
14.05.16