「いい子にしてたらサンタさんがプレゼント届けに来てくれるからね」

お母さんがそう言ってたから、私は毎日いい子にしてる。
早寝早起き、お母さんとお父さんのお手伝いもちゃんとやってる。
だからきっと、サンタさん来てくれるはず!

「サンタさん、来てくれるかなあ?」
「もちろん、とってもいい子にしてたもんね」
「えへへ」

お母さんと一緒にテーブルを拭いていたら、お母さんがよしよしって頭を撫でてくれた。
お母さんの手、あったかくて大好き。

「お母さんはサンタさんになにお願いしたの?」
「お母さんは大人だから、サンタさん来てくれないの」
「えー!」

お母さんの返事にびっくりして大きな声を出してしまう。
大人だからサンタさん来てくれないなんて、お母さんかわいそう。

「お母さん、さびしいね……」
「大丈夫よ。みんなが元気にしてくれてることが一番のプレゼントだから」

お母さんは笑ってそう言うけど、絶対さびしい。
わたしはこんなにサンタさんが来るの楽しみにしてるのに。

だからわたしは、お父さんに相談することにした。

「お父さん、お父さん」
「ん?」

お昼ご飯の後、お片づけのお手伝いをした後にソファに座るお父さんに耳打ちした。

「お母さんにはサンタさん来てくれないんだって。かわいそう」

お父さんは、泣きボクロのすぐ側にある目をまん丸にした。

「大丈夫。には俺からプレゼントがあるから」
「お父さんから?」
「ああ。サンタさんの代わり。びっくりさせたいから、には秘密」

お父さんはしーって人差し指を立てるから、わたしも同じことをした。

「ひみつ、できるよ」
「ああ、偉いな。きっと翠にはサンタさんがすてきなプレゼントをくれるよ」
「わあい!」

大きな大きな靴下も用意したし、サンタさんにお礼のお手紙も書いておいた。
サンタさん、早く来てくれないかなあ。








「ん……」

クリスマスパーティが終わった後、夜中に目が覚めてしまった。
トイレ、行きたい。
もぞもぞベッドから出て、トイレに向かう。
もう、ひとりでトイレにだって行ける。だっていい子だもん。

「あれ……」

眠い目をこすりながらトイレに行こうとすると、お父さんとお母さんの声が聞こえてきた。
リビングのドアを覗くと、お父さんとお母さんがソファに座ってる。

、メリークリスマス」
「メリークリスマス、辰也」

二人はじーっと見つめ合ってる。
なんだろう、いつもとちょっと雰囲気が違う気がする。

「これ、クリスマスプレゼント」
「わ、ありがとう」

お昼に言ったとおり、お父さんはお母さんにプレゼントを渡してる。
キラキラしたネックレスをもらったお母さんはすっごくすっごく嬉しそうだ。
お母さんにとってのサンタさんは、やっぱりお父さんなんだ。

「あっ」

お母さんがお父さんにキスをした。
なんでだろう。いつもおうち帰るときとか朝起きたときとかに二人はキスしてるけど、今日はいつもとちょっと違う。
ドキドキしちゃう。

「似合ってるよ」
「ありがと」

お母さんはもう一度お父さんにキスをして抱きついた。
お母さんはいつもみたいな顔じゃなくて、甘えるみたいにお父さんにくっついてる。

なんだか、ここにいちゃいけない気がする。
あわてて私はトイレに向かった。

ドクンドクンと心臓が大きく鳴ってる。
悪いことしてるみたいだ。ちゃんとサンタさん、来てくれるかな。










ママがサンタにキスをした
16.12.24


メリークリスマス!



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