「、今日帰りご飯食べてかない?」
「あー…今日はちょっとごめん。用事あって」
「なーに?彼氏?」
「だといいんだけどね〜」
同僚からの誘いを断って家路を急ぐ。
適当に流したけど、用事の正体はまさに「彼氏」
誰にも言っていない、秘密の恋人。
「今から…帰るよ…っと」
そうメールを打てばすぐに返信。
『部屋で待ってます』
それを見ると顔が綻ぶ。
私の彼氏−黒子テツヤくんは、高校生。
ちょっと、どころではなく年が離れているから、私は誰にも彼のことを言わない。
「ただいまー」
そう言って自室のドアを開けると、いい匂い。
「おかえりなさい」
「あ、ご飯作ってくれたの?」
「はい。そんなにうまくはありませんが」
テツヤくんはまるでここが自分の家かのように出迎えてくれる。
待ってる、とメールは来たけどまさかご飯まで作ってくれているとは。
「お風呂もできてますよ?」
「わ、何この至れり尽くせり」
「ご飯にしますか?お風呂にしますか?それともボクですか?」
「…熱でもあるの?」
「ほんの冗談です」
君は真顔で冗談言うから冗談に聞こえないんだよ。
そんなつっこみを入れつつ、テーブルにつく。
「おいしい!」
「ありがとうございます」
「高校生男子で料理うまいってめずらしくない?ふつうみんなできないでしょ」
「どうでしょう。部活の人たちはできる人多いですよ」
そんな話をしながら箸を進める。
この後にお風呂まで用意してあるなんて…。
「お風呂上がったらマッサージしてあげます」
「え?」
「嫌ですか?」
「嫌じゃないけど、なんでそこまで…私なんか今日誕生日か何か?」
「最近、残業続きで疲れてるって言ってたので、少しでも楽になればと思って」
テツヤくんは優しく微笑んでそう言った。
優しい子だなあ、そう思って頭を撫でればむっとした表情に変えてしまう。
「…子供扱いしないでください」
「子供だよ」
テツヤくんは間違いなく子供だ。
驚くほどの年の差ではないけど、外を大手を振って歩けるような年齢差ではない。
まあ、姉弟に見られるのがオチだろうけど、何かあっては申し訳ない。
「テツヤくんが20歳くらいになればいいんだけどね」
そうすれば、世間から疎まれるような見た目ではなくなる。
15歳ってところが、聞こえが悪い。
だから、私たちはこうやって部屋で二人きりでも何もしない。
私が何もさせない。
「すぐにはなれません」
「そうだね。あと4年ちょっとか」
「じゃあ、4年経ったら二人でいろんなところに行きましょう。ちゃんと、堂々と」
「4年経ったら私おばさんだよ?それでもいいの?」
「さんがおばさんになってもおばあさんになっても、ボクはさんが好きですよ」
テツヤくんは優しい声でそう言ってくれる。
曇りなく4年後の約束をしてくれるのが、嬉しくて。
「テツヤくん、そこはね、『まだおばさんじゃないですよ』って言ってくれないと」
「あ」
「やっぱり子供ね〜」
そう言えばまたむっとするから、私は笑う。
「大人になってね。ずっと待ってるから」
待ってる
12.12.05
リクエストの年上ヒロインを準備万端で家でお出迎えしてくれる話でした
やよさんありがとうございました!
感想もらえるとやる気出ます!
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