今日も陽が昇って朝が来て、沈んで夜が来る
春の夜は星が見づらい。雲に隠れた月と、星がひとつ、ふたつ。
死んだら人は星になるって言うけど本当だろうか。じゃあ、あのくすんだ感じの星が國春か。
とりあえずあの綺麗な一等星でないことは確かだ。そんなことを考えながら缶ビールを開けて一口飲んだ。
國春の墓(と言えるのかわからないもの)にビールをかけた。
いつかあいつが、私が死んだら墓にビールをかけてやると言ってたなぁ。
私ビールより焼酎のほうが好きだけど、って言ったらあいつは笑ったっけ。笑うなよバーカ。ああ、もう笑えないんだっけ。
墓には私が来る前に缶ビールが置かれてた。多分「お前が死んだらビール供えてやる」って話、他のやつにもしてたんだろう。
私が死んだら、まぁそれなりに泣く人はいるだろう。泣いて、私の墓に焼酎でもかけてくれ。
國春が死んだとき、私は泣いたりはしなかったけど、それなりのショックは受けた。
1週間くらいボーっとしてたし、ああ、私悲しんでるんだなぁと思った。
一晩寝ないで悲しんだけど、陽が昇って朝が来た。眩しい朝。
外に出て、街を歩いていたらいつの間にか陽は沈んで夜が来ていた。
國春、あんたがいなくても世界はまわってるよ。世界は人間の誰か一人が死んでもお構い無しにまわる。
ぐるぐる、ぐるぐる、まわってるのに何で人間は目がまわらないのかな。
ああ、人間も、まわってるからよね。一人一人の世界がまわる。
ねぇあんたが死んでから、私の世界はずっと夜のまま、回らないんだけど。
このままじゃ目がまわっちゃう。助けられるのは、國春、あんたしかいないのに。
まわる世界
07.08.19