「神様様一生のお願いです!!」
「…は?」


ある日の放課後、榛名は下駄箱でいきなり私に頭を下げてきた。

「ちょっと、いきなり何よ。ていうか一生のお願いって」
「いや〜…それがですね…ノート、つか現国のノートコピーさせて欲しいんですよ」
「ああ…」

テストまでいつの間にか1週間を切っている。
普段授業で寝てばかりの榛名にとって、ノートの貸し借りはテスト前の当たり前の行為だそうだ。

「てかなんで私なの?榛名と仲いい野球部の…秋山くんだっけ、あの人頭いいんじゃないの?」
「秋山のクラスとは現国の担当違うからノート見せてもらっても意味ねえんだよ」
「だったらほかの野球部の子とかさ。私じゃなくてもいいでしょ」
「ほかの野球部の連中はノート見ても汚くて何書いてあるかわっかんねえ」
「……」
「お願いします!だけが頼りなんだよ!アイス奢るからさ!」
「…しょうがないなあ」

正直な話早く帰ってテスト勉強したかったけれど、ここまで頼まれたら仕方ない。
まあコピーだけならそこまで時間もかからないだろうし。

「で、コピーするのそこのコンビニでいいのよね?」
「おう」






コンビニに着き、私のノートを受け取ると榛名は早速コピー機へ向かった。
コピーさせてほしいって、てっきり私は寝てしまった授業分2〜3回分かと思っていたけど、榛名はテスト範囲の全部をコピーしているようだ。

「あんた、そんなんで本当にテスト大丈夫なの?」
「なんとか赤点は免れてみせる」
「…頑張って」
「…よし、終わった!マジサンキュ!」
「どういたしまして」

榛名はコピーされた紙を整えずに鞄の中に突っ込んだ。
…こいつ本当に赤点免れるんだろうか…。

「じゃ、アイスよろしく」
「おう、何でも言ってくれ!」

アイスコーナーの前に立ち選ぶけど、奢ってもらうとなると中々決められない。
やっぱり好きなものを選ぶべきか、それとも自分で買って食べたりしないものを食べてみるべきか…。

私が云々唸っていると、榛名は横からさっとアイスを一つ取った。

「それ美味しいの?」
「おお」
「じゃあ私もそれで」

榛名は手早く会計を済ませると私にアイスを一つ投げた。

「あ、美味しい」
「だろ?」
「うん、ノートコピーさせただけでコレもらえるなんてラッキー」
「…じゃあ次からもコピーさせてくれよ」
「?まあ減るもんじゃないし、別にいいよ」
「…マジ?」
「うん」

横で榛名が小さくガッツポーズした気がするけど、そんなにノートコピーさせてほしいんだろうか。
とりあえずアイスが美味しいので、次にノートを貸すときを楽しみにしておこう。














名目はアイスとコピー
(本当コピーなんて口実で)
10.06.11