「はあ〜…」
「大きなため息だ」
休日、辰也の部屋に響いた私のため息。
「まだ悩んでるの?」
「だって」
ため息の原因は部活の先輩だ。
「別に嫌いなわけじゃないのよ?ただ、ときどきイラッときちゃうっていうか」
「うん」
「私が悪いときもたくさんあるよ。でも先輩が悪いときもあるしさあ」
同じ部活の先輩とうまくいかない。ケンカ、とまではいかないけどそれになりかけたり。
「でも、部活やめたくないし。あ〜、なんかもう…」
「そっか」
愚痴をこぼせば、辰也は私の頭を優しく撫でてくれる。
大きくて、暖かい手だ。
「…どうすればいいかなあ」
「のしたいようにするのが一番だよ」
「したいように…」
「どうしたい?」
目を細めて辰也は問いかける。
どうしたい、か。
「仲良く、とまではいかなくても、イラッとこないようになりたい…」
「じゃあ、言ってみる?先輩に」
「…言わない。言ったら、うまくいかなくなっちゃう」
「そうだよね」
…八方ふさがりとはこのことか。
どうすれば、いいのかな。
「何かあったら、オレに言えばいいよ。人に話すと、少し楽になるだろ?」
「…楽に、なるけど」
「?」
「愚痴ばっか聞いてたら、辰也、嫌な気分にならない?」
ここまで愚痴っておいてなんだけど、人の愚痴聞くって、いい気分ではないはず。
そう言ってみると、辰也はまた私の頭を撫でる。
そう、この手。
この手に私はいつも甘えてしまう。
「辰也」
「オレは、が元気がないのが一番嫌だよ。だから、それでが元気になるなら別にいいさ」
そう言われれば、胸がきゅんと熱くなる。
私はぎゅっと辰也に抱き着いた。
「なんでそんなに優しいの?いつもはもっと意地悪なのに」
「ひどいなあ」
辰也はクスクス笑うけど、本当のことだ。
「が元気ないときまで意地悪するほど歪んでないよ」
辰也は私を優しく抱きしめる。
そうすれば、嫌なこととか、ぐちゃぐちゃした気持ちが少しずつ溶けていく。
少し、息をするのが楽になる。
「何かしてほしいこと、ある?」
「…キスしてほしい」
「うん」
そう求めれば、優しくキスをしてくれる。
悩みの原因がなくなったわけじゃないけど、随分と心が軽くなる。
「ねえ、なんでそんなに優しいの?」
「が好きだから、早く元気になってほしいから。それだけだよ」
そう言って、もう一度触れるだけのキスをする。
目を閉じれば、心が温かくなって。
苦しい気持ちはまだあるけど、辰也といると楽になれる。
抱きしめる腕を強めれば、辰也も私をより一層抱きしめてくれた。
メルト
12.11.28
リクエストの元気のないヒロインを励ます話でした
ミカさんありがとうございました!
落ち込んだときに話を聞いてくれる存在ってすごくありがたいと思います
感想もらえるとやる気出ます!
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