「ふあ…」
朝の7時、私は音を立てないよう起き上がりベッドから出た。
隣で眠る辰也を起こさないように。
今日、辰也の会社は創立記念日でお休みだ。
だから辰也は朝はのんびり起きるはず。
私も今日休みを取って二人でどこかに出かけられたらよかったのだけど、今日は部署で大事な会議があって休めない。
なので、せめてゆっくり眠る辰也の邪魔にならないよう、彼を起こさないように仕事へ行く準備をしなくては。
「よ、っと…」
辰也は朝放っておくとパンだけ齧って終わる、なんてこともある。
別にパンでもいいのだけど、自分の朝ごはんを作るついでに辰也の分のご飯も作っておく。
ご飯は前日に炊飯器にセットしておいたから、大根のお味噌汁に、卵焼きに、サラダ。
こんなものだろう。
あと、辰也にメモを残しておく。
”おはよう、のんびり眠れた?
ご飯作ってあるから食べてね。せっかくのお休みだから、今日はゆっくり休んでね。
行ってきます!
”
辰也宛にメモを残して、私は家を出た。
*
朝、眠い瞼を擦りながら起き上がる。
眠る前は隣にいたはずのがいない。
「…ああ、そうか」
今日はオレの会社が創立記念日で休みだから、はオレを起こさないよう起きて会社へ向かったのだろう。
結婚してから、毎日と朝を過ごしていた。
朝がいないのは変な感じだ。
「はあ」
ご飯作るの、面倒だな。パンでいいかな。
そう思いながら台所に行くと、冷蔵庫に可愛い字のメモが貼ってあった。
”おはよう、のんびり眠れた?
ご飯作ってあるから食べてね。せっかくのお休みだから、今日はゆっくり休んでね。
行ってきます!
”
そのメモを見て、ガスの上の鍋を覗いた。
大根のお味噌汁が作ってある。
「…」
さすが、オレが朝ご飯作るのを面倒がると思ったのだろう。
「いただきます」
の優しい気遣いに感謝しつつ、オレはお味噌汁を温め直した。
***
「ん…」
朝、起きると隣にいるはずの辰也がいない。
そうだ、辰也は今日出張で早く出ると言っていた。
恐らくもう家を出てしまったのだろう。
「はあ…」
辰也のいない朝というのは味気ない。
しかし、そんなことを言っていても仕方ない。
私はベッドを出て、台所へ向かった。
「あれ」
冷蔵庫から牛乳を取り出そうとしたとき、冷蔵庫にメモが貼ってあるのに気付いた。
辰也の字だ。
”この間ご飯作ってくれたから、今度はオレがお味噌汁作っておいたよ。
仕事、頑張ってね。帰って来たらキスしよう。
今日も愛してるよ”
辰也のメモは丁寧な字で書かれている。
最後の一文にクスリと笑ってしまう。
「辰也ってば」
ガスの上のお鍋を覗くと、ワカメのお味噌汁がある。
辰也が愛情込めて作ってくれたのだろう。
「ありがと、辰也」
もちろん帰って来たら直接言うけど、今言いたくなったのだ。
ありがとう、辰也。私も愛してる。
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15.10.25
10月は今年も氷室祭り!
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