さん、おはようございます」
「あ、おはよう、黒子くん」

通学途中のコンビニ、お昼ごはんを買っていたらクラスメイトの黒子くんに会った。
黒子くんとはこのコンビニでよく会って、そのまま学校へ一緒に行くこともある。
その時間が私は好きで、用がないときもコンビニに寄ってしまうこともあったり。

さん、今日はおにぎりなんですね」
「うん、黒子くんはパン?」
「はい」

そんな会話をしながらコンビニを出て学校へ向かう。
バレンタインのせいか、女の子たちは浮足立っているような。

「ね、今日バレンタインじゃない」
「そうですね」
「クラスの女子みんなで全員分のチョコ用意したから楽しみにしててね!」

とは言っても一人100円程度を出して、安いチョコを詰め合わせしたものだけど。
あまりバレンタインに縁がなかったからこういった企画は楽しかったし、
自分一人であげるには勇気がいるけれど、こうすれば簡単に黒子くんにチョコを渡すことだってできる。


「そうですか」
「…黒子くん、反応薄くない?」

黒子くんはクールだから諸手を挙げて喜んだりはしないだろうけど、もう少し喜んでくれたっていいんじゃ…。

「ああ、すみません。でも…」
「でも?」
「あ、いや、なんでもないです。ごめんなさい」
「え、ちょっと気になるんだけど」

途中で止められたら気になってしまう。
だけど黒子くんは続きを言うどころか私から顔を背けてしまった。

「…あの、黒子くん?」
「そのですね、ボクはみんなからではなくて、さんからもらいたいんです」

予想もしてなかった言葉に私は思わず驚いて鞄を落としてしまった。

「すみません、やっぱり迷惑ですよね」
「め、迷惑じゃない!絶対!」

反射的にそう言うと、黒子くんは少しだけ驚いた顔をして目を逸らした。

「あの、今、甘いものは家から持ってきたみかんしかないんだけど」
「はい」
「それでもいいなら…あげ、ます」
さんがボクだけにくれるなら、なんでもいいです」

鞄からみかんを出して、黒子くんと半分こにした。
今年のみかんはいつもより酸っぱかったはずなのに、とても甘く感じた。









みかん一つください
11.02.14

ハッピーバレンタイン!