は隙がないよね」

休日の午後、辰也の部屋。
ふと告げられた言葉に、目を丸くする。

「え?…隙?」
「そう。いつもシャンとしてて、付け入る隙がないというか」
「そう?」

そんなことを言われたのは初めてだ。
まあ、しっかりしてるね、とか、そういうことは言われるけど。

「ナンパされたことないだろう?」
「ないけど、それは単純に見た目の問題じゃ」
は可愛いよ?」

間髪入れずに辰也はそう言う。
可愛いと言ってくれるのは嬉しいけど、それは惚れた欲目というやつじゃないだろうか。

「隙がないから声を掛けられないんだよ。まあ、オレとしてはあんまりされても嫌だけど」
「…私ってそんなに話しかけにくい?」

声を掛けにくいって、そんなに怖い雰囲気が出ているんだろうか。
ナンパされないと言うのはいいことだけど、怖いと思われてるならちょっとショックだ。

「そういうんじゃないよ、ただ」

辰也は少し笑いながらそう言って、私にキスをする。

「隙がないから、こういうことがしにくいなあって話」
「…普通にしてくるじゃない」

そう言うけど、辰也はいつもこうやって普通にキスをしてくる。
しにくいって、どの口で。

に隙があれば、もっとしやすいと思うから」
「…辰也はそういうの関係なしにしてくると思うけど」

隙があるとかないとか、そんな問題以前に辰也は頻繁にキスしてくる。
下手すると外でもやってくる(やめてと言ってるのに!)くらいだ。

「第一、『しにくい』って言ってこれじゃ、隙が合ったらどうなるのよ」
「もっとするだけだよ」
「それが困るの!」

これ以上されたらたまったもんじゃない。
そう思って大きい声を出すと、また唇を塞がれる。

「本当に困ってる?」
「こ、困ってるよ」
「だって、今も嫌には見えないよ」

全部見通したかのような眼でそう言われ、一瞬怯む。
そりゃ、だって、


「え、」
「隙だらけだよ」

楽しそうに笑いながら、もう一度キスをされる。

「やっぱり、隙、なくてもいいかもね」
「な、なんで」
「隙のないに、隙を作るのも楽しいから」

辰也はくすくす笑って、もう何度目かわからないキスをしてくる。
やっぱり、隙なんて作るもんじゃない。















隙見っけ
12.09.23