「う〜…寒っ」 季節は12月、吐く息は真っ白だ。 本当はこんな気温のときに外に出かけたりしたくないんだけど、 テスト前というこの日、ノートを使いきってしまい、このままでは勉強が進まないので 仕方なくコンビニまで買いに行ったのだ。 「早く帰ろ」 そう呟いて走り出した。 と、走り出した瞬間何かにぶつかった。 え?なんで?電信柱とか、そういう類のものに当たったにしては痛くない。 というか私の前には特に何もないはず… 「あ、すみません」 「…って、ええ!?黒子くん!?」 何もないと思ってた目の前にはクラスメイトの黒子くんがいた。 い、いつの間に…?というか、なんで目の前にいて気が付かなかったんだろう… 走ってるときにぶつかってしまったものだから、ちょっと黒子くんが心配だ。 黒子くんって、体が大きい方ではないし。 「黒子くん、ぶつかちゃってごめんね。大丈夫?思いっきりぶつかっちゃって…」 「いえ、大丈夫です。こう見えても運動部ですから」 「そういえば、今度バスケ部全国大会でるんだよね?もしかして今日も練習でこんな遅くなったの?」 「ええ、まあ。さんはこんな時間に外出ですか?」 「うん。ちょっとノートなくなちゃって」 「でも、こんな時間に女の子一人で出歩くのは危ないです。家どこですか?」 「え?ここから5分くらいだけど…」 「送って行きますよ」 「えええ!?いいよ、だって部活で疲れてるでしょ?」 「大丈夫ですよ」 こっちのほうですか?と黒子くんは私の返事を聞かずに歩き出す。 「ちょ、ちょっと黒子くん!」 声を掛けても止まる気配のない黒子くん。 私は止めるのを諦めておとなしく送ってもらうことにした。 「黒子くん、あの」 「なんですか?」 「…黒子くんって意外と強引なんだね」 「そうですか?こんな真っ暗なのに女の子一人でなんて歩かせられないって思うが普通ですよ」 「まあ、そうかもしれないけど。でも黒子くんってもっと押せば引いちゃうみたいなイメージだったから」 「…そうですね、それはよく言われます。でも、やっぱり大事なところでは引けませんよ」 「あ、家、ここだから。もう本当に大丈夫。ありがとうね」 家の前まで着いて、黒子くんにお礼を言う。 「そうですか、では、勉強頑張ってください」 「うん、黒子くんも部活大変だろうけどテスト頑張ってね」 「…ちょっと心配ですけど、頑張ります」 少し苦笑しながら笑う黒子くん。 私はふふ、と笑いながら来た道を戻る黒子くんの後姿を見ていた。 「あ、」 ふと、黒子くんに言い忘れていたことを思い出す。 「黒子くーん!」 「?なんでしょう?」 「全国大会、頑張ってね」 そう言うと、黒子くんはちょっと驚いた顔をして、優しく微笑んだ。 「さんにそう言われると、ますます頑張らなくちゃいけませんね」 そう言って、少し歩くと黒子くんの姿は見えなくなった。 寒いなあ、とは思ったけどなんだかその場から離れがたく、しばらくの間見えなくなった黒子くんの影を追い続けた。 11.10.03 黒子アニメ化おめでとう! 黒子くんって意外と強引ですよね |