ファーストキスは幼稚園の時だった。
誰にも言っていない。友達にも言ってない。
私と相手だけの秘密だ。
「別に小さいころの話やん」
「小さいころだろうとなんだろうとダメや!蔵も誰かに言ったらしばくで!」
「はいはい」
そう、ファーストキスの相手は幼馴染の蔵ノ介だ。
と言っても、あまりに小さいころなので私は最近まで忘れていた。
思い出したのは、友人とのある会話。
よくある、「ファーストキスはどんなのがいい?」という会話だ。
そこで、忘れかけていた記憶がみるみる蘇ってきた。
幼稚園の頃、眠り姫の絵本が好きだった。
小さかった私は、「起きてほしい相手にキスすれば起きてくれるんだ!」と安易に思ってしまったのだ。
「そんで眠ってるオレにキスしてきたっちゅーわけやな」
「本当あのときの私は何をやってたんや…」
「ちゅーか普通逆やろ、なんでオレが眠り姫やねん」
「それは幼さゆえの過ちです」
本当に何をやっていたんだ、あの頃の私。
ロマンチックの欠片もないじゃないか。
「今やったらちゃんと逆でやらなアカンな」
「え?」
「いくら幼馴染でも、思春期の男の前で気軽で寝たりするなっちゅー話や」
そう言って蔵は私にデコピンを一つくれた。
確かによく私は蔵の前でついつい昼寝してしまうけど、別に気軽に寝てるわけじゃない。
私はちょっと不機嫌になって、口をとがらせた。
「…起こしてくれてもええよ」
そう言ったら蔵は目を丸くした。
「…ホンマにチューするで」
「こっちこそ蔵が寝てたらチューしたるわ」
眠り姫を起こす方法
capriccio様から拝借
きみにキス、きみとキスお題
2012〜2013年拍手ログ
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