12月初旬、花宮と映画を見た帰り、コンビニに寄った。
そういえばまだ年賀状を買っていなかったと思い、すでにある程度印刷された年賀状を数セット手に取る。
「年賀状?書くのか?」
絵柄を吟味していると、花宮が手元を覗き込んでくる。
「そりゃまあ。花宮だって書くでしょ?」
「親戚と教師に」
「ああ…」
なるほどと納得してしまう面々だ。
部の仲間には絶対出さないだろうし、言うと怒られるけど多分ほかに友達いないし。
「書こうか、私」
「は?」
「いや、年賀状。書いてもいい?」
花宮と知り合ったのは今年のことだ。
だから当然今年彼に年賀状は出していない。
「勝手にしろ」
花宮はふいと顔を背けてそう言った。
勝手にしろということは出してもいいということだろう。
さて、彼に出す年賀状はどの絵柄にしようか。
*
1月1日。
朝起きてポストを見ると年賀状が来ている。
宛名を確認して家族に仕分けしていく。
やはり父親宛のものが多いな、なんて思いつつ、たまに自分宛のものを見つけて嬉しくなる。
年賀状を出さない友達も多いけど、やっぱり年賀状はもらうと嬉しいものだ。
「あ」
『様』と端正な字で書かれた年賀状を見つける。
送り主は花宮真。
あっちからも送ってくれたのか。
裏返すとシンプルな絵柄が印刷された年賀状に、一言彼の手書きの字がある。
『今年もよろしく』だけとは、なんともはや彼らしい。
「あれ」
ポケットに入れた携帯が震える。
この振動は電話だ。
画面を確認すると、相手は花宮だ。
「もしもし、あけましておめでとう」
『…おう』
ぶっきらぼうな返事が返ってくる。
まあ、作り笑顔をしながら「あけましておめでとう。今年も宜しく」なんて言われても嬉しくないけど。
「年賀状、届いたよ。花宮も送ってくれたんだね。ありがと」
『ん。こっちも届いた』
電話の向こうで微かに紙の掠れる音がする。
私の年賀状を見ているのだろう。
『…オレも』
「え?」
『なんでもねえよ。じゃあな』
そう言って花宮は電話を切ってしまう。
自分も電話を置いてくすっと笑った。
花宮に出した年賀状にはこう書いておいた。
すてきな一年になりますように
きっとお正月も普通の休みみたいに過ごしてると思うけど
だからってあんまりだらだらしすぎないようにね
よろしくお願いします
簡単な暗号文…というほどでもない。
花宮なら見てすぐにわかるだろう。
まさか『オレも』と返してくれるとは思わなかった。
今年もいい年になりそうだ。
彼からの年賀状
15.01.01
今年もよろしくお願いします!
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