窓の隙間から秋の柔らかい日差しが差し込んでくるキッチンで、砂糖の代わりに蜂蜜を入れた紅茶を淹れる。
うん、おいしい。我ながらおいしくできた。
満足げに紅茶を飲みながら、壁に掛けられた時計を見る。
時刻は朝9時50分。
今日は休日だけれど一緒に出かける約束をしているし、もう辰也を起こした方がいい時間だろう。
半分飲んだ紅茶のカップを机において、寝室に向かう。
物音一つしないあたり、辰也はまだ眠っているのだろう。
ダブルベッドを覗き込むと、毛布にくるまる辰也の姿が見える。
すやすやと寝息を立てる辰也の寝顔は、何度見ても可愛いと思う。
…っと、いけない。辰也の顔に見とれている場合ではない。
「辰也、辰也起きて。もう朝だよ」
「ん……」
「辰也ってば」
「んー……」
相変わらず辰也は寝起きが悪い。
一度や二度じゃ滅多に起きないんだから。
「辰也、朝だよ」
「んん……あと5分……」
「それ、ずっと言い続けるでしょ」
辰也はいつもそう。あと5分、あと10分。そうしてあっという間に一時間が過ぎていくんだから。
「んー……」
「辰也」
「…じゃあ、キスしてくれたら起きる」
あ、また言った。辰也はいつもこう言うんだから。
「もう」
辰也は仕方ないんだから。
呆れつつもベッドの端に手をついて、辰也の方へ身を乗り出す。
「わっ」
キスした瞬間、辰也に布団の中に引きずり込まれる。
辰也にぎゅっと抱きしめられて、さっきの辰也みたいにお布団にくるまる格好になってしまった。
「辰也!」
「一緒に寝よう?」
「もう、起きてって言ってるのに」
「だって、何度もこうなってるんだからわかってただろう?」
……た、確かに辰也に「キスしてくれたら起きる」と言われてキスをして、すぐに起きてくれたのは数えるほど。
でも、別にこうなりたいと思ったわけでは……ない、はず。
「今日、一緒に出かけるって言ったのに」
「出かけるよ?でも、もうちょっとこうしてたい」
辰也はほっぺを私にすり寄せて、甘えるような仕草を見せる。
ああもう、可愛いなあ。
辰也は背も高くて顔も綺麗で素敵な男の人なのに、こういうとき可愛くなるから困るのだ。
「……ちょっとだけだよ?」
「うん」
辰也は私の返事を聞くと、嬉しそうに笑って私にキスをする。
辰也に甘いなあという自覚はあるけれど、こんな笑顔見せられたら甘くなるしかないじゃない。
紅茶は冷めちゃっただろうけど、起きたら辰也と一緒に温め直せばいいか。
そう思いながら、辰也の腕の中で目を瞑る。
温かい日差しが、私たちを包む。
ぬくもり
17.10.30
ハッピーバースデー室ちん!
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