「あーー、ちょっと、ちょっと待って!」
「待ったなし!」
「ずるいー!!また負けた!」
テレビの画面には私の使っていたキャラクターが力なく倒れている様子が映し出されている。
高尾くん、ゲーム上手いよ…。
「こんなにハンディキャップ付けてもらってるのに、全然勝てない…」
「んー、コツ掴めば簡単なんだけどなー。次は協力プレイでもする?」
「あ、その前にちょっとお手洗い貸してくれる?」
「ん、どーぞ」
そう言って高尾くんの部屋から出る。
何度か高尾くんの家には来ているけど、やっぱり緊張してしまう。
そんな私の様子を察してか、高尾くんはゲームを出してくれたりコメディ映画を見せてくれたり、なにかと気を紛らわせようとしてくれる。
そうやっていつも私に気を遣ってくれる。
「ごめん、お待たせ」
そう言って高尾くんの部屋に帰ると、ちょうど高尾くんが大きくあくびをしているのを見てしまった。
「あ、わり」
「眠いの?」
「いや、ダイジョーブ」
「無理しちゃダメだよ」
そう言って高尾くんの隣に座る。
毎日部活部活で疲れているだろう。
眠くなるのも当然だ。
「私もう帰るよ。ゆっくりして?」
「いや」
高尾くんは私の腕を掴む。
少しドキっとする。
「た、高尾くん?」
「帰っちゃやだなーって」
「でも、眠そうだし…」
「んー…アレ」
「?」
「膝枕、してくんね?」
ひ、膝枕!?
ボッと顔が赤くなるのを感じた。
膝枕、膝枕…。
「や、嫌ならいーんだ。ちょっとコーヒーとか飲んで」
「あ、待って!」
立ち上がろうとする高尾くんの服の裾を掴む。
「い、嫌じゃない、よ」
そう言って座り直す。
「…マジで?」
「ど、どうぞ」
膝のあたりをぽんぽんと叩くと、高尾くんが寝転がってそこに頭を乗せる。
ひ、膝枕だ…。
「…ど、どう?」
「気持ちいーわ」
高尾くんはへらっと笑う。
私はドキドキし過ぎて、心臓が痛い。
「…」
「は、はい…って」
名前を呼ばれたので返事をすると、高尾くんは突然私の膝に頭を乗せたまま変顔をした。
「あはは、どうしたのいきなり?」
「笑った」
高尾くんはそう言って柔らかく笑う。
あ、また。
「…高尾くん」
「んー?」
「…いつもありがとう」
「?」
「いつも、私が緊張してるとき、こうやって笑わせてくれるでしょ」
いつもそう。
高尾くんはこうやって強張ってる私を和ませてくれる。
「そんなんじゃねーって」
「そうでしょ?」
「…たださ、の笑ってる顔が好きなだけ」
高尾くんはそう言って笑う。
いつもみたいな明るい笑い方じゃなくて、穏やかな、優しい笑顔だ。
「……私も」
「?」
「私も高尾くんのそういう顔、好きだよ」
「え、どういう顔してた?」
「気の抜けた顔」
「げ」
そう言って高尾くんは自分の顔を両手で覆う。
あ、ずるい。
「隠しちゃやだよ」
「やだ超恥ずかしい」
「ええー…」
残念そうな声を出すと、高尾くんは手をどけてくれた。
「こんな顔好きなの?」
「うん。なんか、いつもと違って…」
「…そっか」
いつもみたいな明るい表情も好きだけど、こういう、ゆっくりしたときしか見られない表情も、いいなあ。
「なんか目覚めて来たわ」
「そう?」
「ん。でも」
「?」
「もうちょっと、このまま」
高尾くんはそう言って目を瞑る。
私も、もう少しこのままがいいな。
穏やかな時間
13.09.23
ゆうなさんリクエストの高尾でした!
伊月か高尾だったんですが思いついたのが高尾だったので
ゆうなさんありがとうございました〜!
高尾が彼女の前でだけ緩んだ顔したら萌えるなというお話
感想もらえるとやる気出ます!
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