今日は七夕、辰也と学校から帰る途中の商店街にも笹が飾られている。
「あ、オレたちも願い事書いていいんだ」
「うん」
ここの商店街は入り口に毎年短冊を用意してくれている。
勝手に書いて勝手に飾っていいのだ。
「何にしようかな」
「私は…」
ペンを取りオレンジの短冊に願い事を書きはじめる。
「”期末テストがうまくいきますように?”、ずいぶん謙虚なお願いだね」
「謙虚かな…だってテスト中だし」
今は期末テストの真っ最中。
それもあって思いついた願い事はこれだった。
「『辰也と一緒にいられますように』とかは書いてくれないんだ…」
「えっ…」
辰也はしょんぼり落ち込んでそう言った。
私はもう一枚取った短冊を持って固まってしまう。
「もう一枚書こうとしてたんだけど…」
今度はピンクの短冊にそう書こうと思っていた。
先ほどのは字を慣らすことも兼ねてというか、なんというか。
「そっか」
辰也はぱあっと顔を明るくさせる。
安心したのか辰也もサラサラっと短冊に字を書き始める。
「とずっと一緒にいられますように」
辰也はそう言って短冊を書いた。
「ここの短冊は3枚まで書いていいんだよ」
「3枚…織姫と彦星は太っ腹だね。じゃあもう一枚はといつまでも仲良くいられますように」
「ふふ」
さて、あと一枚は何にしよう。
みんな健康でいられますように、かな。初詣のときもそうお願いしたけど、辰也とずっと一緒にいられますようにってお願いも初詣でしたし、かぶってもいいだろう。
「は優しいね」
「そう?」
「ああ。だって自分の事じゃなくてみんなのことまでお願いして」
「そうかなあ。だって辰也には元気でいてほしいし…」
辰也には健康で元気でいてもらいたいし、辰也以外の家族や友達、大切な人たちにはいつだって元気でいてもらいたい。
「ありがとう。じゃあオレもそれにしよう」
辰也はそう言うと水色の短冊にそう書いた。
辰也のお願い事はあと一つだ。
「あと一個か…じゃあ」
そう言って辰也は黄色い短冊を手に取った。
そして丁寧に一文字ずつ書いていく。
「がいつでも笑顔でいられますように」
辰也は書いたお願い事を読んだ。
胸の中に温かいものが広がっていく。
「…辰也」
「が笑っていると俺も嬉しいから」
辰也は私の頭を撫でながらそう言ってくれる。
そう言われてしまうと、自然と笑顔になってしまう。
「ありがと」
「いいえ。さて、飾ろうか。の貸して?高いところに飾るよ」
辰也はそう言うと近くに用意してあった笹に私の短冊を飾ってくれる。
そしてその隣に自分の分の短冊を括り付けた。
「きっと叶うよね」
「ああ」
そう言って手をつないで二人で歩き出した。
きっと今夜は綺麗な天の川が見られるはず。
織姫の笑顔
15.07.07
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