うちのお父さんとお母さんはとっても仲良しだ。
いつも二人でニコニコ笑いあって、目が合ったらキスをしてる。
「ぼくもお母さんとちゅーしたい!」って言うと、いつも「ほっぺね」って言ってほっぺにキスしてくれる。
ぼくとはお口とお口はだめらしい。
お父さんがうらやましい。


「お父さん、今日遅いね」

夜ご飯を食べ終わって、妹も寝て、お母さんとテレビを見ている。
そんな時間になってもお父さんは帰って来ない。

「今日は遅くなるって言ってたから」
「むー…」

お母さんがぼくの頭を撫でるけど、お父さんが帰って来ないのは寂しい。
だって、今日休み時間に友達とボール遊びしたときに、「氷室上手いな」って褒められたんだ。
お父さんといつもバスケしてるからそう言われたんだと思う。だからそれをお父さんに言いたい。

「もう寝たら?眠いんでしょ」
「眠くない!」
「もう。明日起きれなくなっちゃうわよ?」
「ちゃんと起きるもん」
「今日中々起きれなかったでしょ?」
「う…」

お母さんにそう言われて、ぼくは唇を尖らせる。
ぼくの表情を見たお母さんは、ちょっと困った顔で笑った。

「歯磨いたよね?」
「うん」
「じゃあ、寝ましょ」

お母さんは両手でぼくのことを抱き上げる。

「重くなったわねえ」
「おもい?」
「大きくなったね、ってこと」

お母さんはそう言うけど、お母さんの方が大きいし、お父さんはもーっと大きい。
まだまだぼくはちっちゃい。
いつかお父さんぐらい大きくなれるかなあ。

お母さんはぼくを抱っこしたまま、ぼくの部屋のドアを開ける。
奥にあるベッドにぼくを寝かせると、優しい顔でぼくの頭を撫でた。

「おやすみなさい」
「おやすみ」

お母さんはぽんぽんと優しくぼくのお腹をあやすように叩く。
そのリズムに、段々と眠くなってきた。








「んー…」

眠っていたのに、起きてしまった。
トイレに行きたい。そう思ってベッドから降りて自分の部屋のドアを開けた。

そしたら、玄関の方からお父さんの声が聞こえてきた。

「お父さん!」

お父さんが帰って来たんだ。
そう思ってぼくは玄関の方へ駆けだした。


「おかえりなさい」
「ただいま」

玄関に顔を出すと、スーツ姿のお父さんとパジャマ姿のお母さんがキスしてる。
ちょっとだけぼくの顔は赤くなった。

「疲れた?」
「疲れたよ…はあ」

お父さんは疲れた顔でぎゅーっとお母さんに抱き付いた。
ぼくや妹には見せない顔だ。

「お疲れ様」
がキスしてくれたら元気になるかも」
「もう」

お母さんは背伸びしてお父さんにまたキスをする。
なんだか、ぼくや妹が見ているときとはちょっとだけ違う雰囲気だ。

「元気出た?」
「出た。は最高だ」
「ふふ」
「あれ」

お父さんがぼくのことに気付いたようで、ぼくのほうに駆け寄ってきた。

「葵、まだ起きてるのか?どうした?」
「おしっこ」
「ああそっか。ほら」

そう言ってお父さんはぼくの手を握る。

「ぼく、一人でいけるよ」
「そっか。もう五歳だもんな」

お父さんがわしゃわしゃとぼくの頭を撫でる。
お母さんの手もぼくよりずっと大きいけど、お父さんの手はもっともっと大きい。

「おとうさん、明日おはなしきいてね」
「ああ、もちろん」
「おやすみ」
「おやすみなさい」

そう言ってぼくはトイレの方に駈け出した。
お父さんとお母さん、いつも仲いいけど、なんとなく見ちゃいけなものを見ちゃった気がする。









お父さんとお母さんのひみつ
15.10.06

10月は今年も氷室祭り!





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