「あーあ…」 「人の部屋で溜め息つくんじゃねえ。お前だけじゃなく俺の幸せまで逃げるだろ!」 「失礼な。逃げるのは赤也の幸せだけだよ、きっと」 「それならいいか。…あれ?」 さすがバカ也。何がおかしいのかわかってないみたいだ。 私の溜め息の理由は一つ。プチ失恋だ。 失恋というほど真剣に好きだったわけじゃないけど、少し気になってた人が実は彼女もちだったって言う話。 ショックっていうより、残念って感じ。 「なんだよ、たかだか失恋ぐらいで」 「そこ!失恋って言わない!プチ失恋!」 「じゃあぐだぐだ言うなっつーの!」 「だってさ!せっかく未来のいい旦那を見つけたと思ったのに!」 「お前その歳で旦那見つける気だったのかよ!?」 いや、まあ旦那は言いすぎだったとしても、せっかくこう…なんていうんだろう、久々にピン!と来る人を見つけたと思ったのに。 私自身、そんなに恋多き女ではないので、一旦恋を諦めると次に恋をするまでに時間が掛かりそうで嫌なのだ。 実際、幼稚園に恋して以来の久々のときめき感だったのに…! 「どーすんのよ、このまま恋をせずに大人になったら」 「そしたら俺が嫁にもらってやるから安心しろよ」 「は?」 「みたいなやつ、俺んとこくらいしか嫁に来る先ねーからな」 そういえば、幼稚園で失恋したときも同じこと言われたっけ。 そのとき私が返した言葉は、確かこれ。 「それはこっちのセリフだから」 「ああ?」 「赤也みたいなやつのところにお嫁に行こうなんて子、私ぐらいだよ?」 そしたら赤也はあのときと同じように私にチョップをして、「俺なんてモッテモテだぞ!」と言ってきた。 この調子だと、10年後も同じことをしているのかな、私たち、なんて思いながら、チョップを返す。 10年後にはもう、その言葉はプロポーズ。 終わることのない世界 08.05.02 |