「はあ…」 金曜の仕事帰り。 一週間がやっと終わったという安堵と一週間分の疲れのため息を付きながら自分の部屋のドアを開ける。 「…ん?」 玄関の電気が暗いから気づかなかったけど、部屋に明かりが点いているようだ。 少し構えつつそっとドアを開ける。 「お帰り」 「…なんだ、辰也か」 私はほっと一息ついた。 泥棒か何かかと思った。 「部屋に来るのは別にいいからさ、連絡入れてっていつも言ってるじゃない。泥棒かと思うでしょ」 「ああ、忘れてた」 辰也は「そういえば」という顔で言う。 「今日は遅かったんだね」 「残業よ残業、はー疲れた」 手を洗って辰也の隣に座る。 「あんたは練習してきたの?」 「うん」 「元気ねえ、若いっていいなあ」 「と3つしか違わないじゃないか」 「3つも、じゃない」 私はもう一度ため息を付いた。 17歳と20歳、高校生と社会人。 気にするなと言われても無理だ。 辰也の学校の話、とりわけバスケ部の話を聞くとときどきたまらなくなる。 たった3つしか違わないはずなのに、なんだかとても遠く感じるから。 「なんであんた高校生なのよ…」 「そんなに気にすることかなあ」 「気にするわよ、少なくとも私は」 正直、今は3つ年下の高校生の辰也より10個以上年上の上司のほうが近い感覚だ。 付き合う前は高校生と社会人がこんなに差があるとは思っていなかった。 「別に身内なわけでもロリコンなわけでもないんだしそんなに気にしなくていいと思うけど」 「ロッ…さらっとすごいこと言わないでよ」 「男と女で、年の差もたった3歳、その上犯罪でもなんでもないんだし、何を気にする必要があるの?」 「理屈じゃなくて感覚の問題なの」 別に悪いことをしてるわけじゃない。 友人に「彼氏が高校生」だと言ったところで(ちょっと言い難いだけで)引かれたり責められたりはしない。 理屈じゃない。単純に感覚の問題なんだ。 「だったらもっと単純じゃないか」 「え?」 辰也は突然私にキスをする。 「オレはが好きで、もオレが好き。一番重要な感情が一緒なんだから、なんの問題もないだろ?」 「まあ、それはそうだけど…」 「は考えすぎなんだよ。オレはが好き、はオレが好き。それだけでいいんだよ」 当然のことのように、ためらいもなく言い放つ。 そんな辰也がうらやましい。 「…だーかーらー!」 「何?」 「なんであんたはまったく気にしないのよ!?普通男が年下の場合、男のほうが気にすると思うんだけど!」 「だから何度も言ってるじゃないか。気にする必要ないんだよ」 「私はあんたみたいにさっぱり割り切れないの!」 「だったら、気にする余裕もなくしてあげようか」 私の髪を梳きながら、辰也はもう一度私にキスをする。 今度は長く、深いキス。 「ただの男と女になれば、年の差なんて関係ないだろ?」 辰也の言葉に顔が赤くなるのを感じる。 これじゃどっちが年上かわからない。 ラブポーション 12.06.15 キリリクミカさんへ! 年の差を気にする年上OLヒロインと気にしない氷室の甘でした リクエストありがとうございました! 氷室は年の差とか気にしなそうですね 年齢差があまり重要視されないアメリカ時代が長いってのもありますがそもそも性格上気にしなそうです |