「うわあ…」


猫を追いかけて校舎裏まで来たら告白の現場に遭遇してしまった。
そこにはクラスメイトの白石と2年生の女の子。
「付き合ってください!」というストレートなセリフが女の子から飛び出した。

校舎裏、あまり人が来ないこの辺りは告白にはぴったりのスポットなのは知っていたけど、まさかこんな現場に遭うなんて。
帰り道が二人のいる場所なので帰ろうにも帰れない。
ああ…盗み聞きしてしまってすみません…。

「すまんなあ」

あ、どうやら白石が断ったようだ。
女の子は一礼して帰って行った。
白石も帰ってくれないと私も帰れないんだけど…。

「盗み聞きとはええ度胸やなあ」
「わっ!?」

草陰から覗いていると白石がこっちへ顔を向けた。

「…いつから気づいてた?」
「最初から」
「…盗み聞きは申し訳ないと思っとるけどこれは不可抗力というやつで」
「ああ、ほんの冗談や。わかっとるから」

ほっと溜息をついて立ち上がる。
もうすぐ昼休みが終わる。白石も私も何を言うでもなく教室へ向かった。
なんとなく、ふとさっき疑問に思ったことを口にした。

「白石って何で彼女いないの?」
「なんや、突然」
「だってあんなにモテるのに、付き合ったことないんでしょ?普通、疑問に思うと思うんだけど」
「別にそないモテへんしなあ」
「嘘吐け」

さっき告白された以外にも、何度か告白されているっていう話は聞いている。
第一、その顔で強豪テニス部のキャプテンで、頭が良くてモテないわけがないじゃないか。

「第一、いくらモテたからって好きな子に好かれんと意味ないやん」
「おお、切ない発言」
「コラコラ、茶化すなや」
「いやー、白石ってロマンチストなんやね」
「ロマンチスト?」
「だってそうやん。最近の子なんてみんな好き子やなくても告白されたら付き合いますーとかそんなんばっかやん」
「あー、せやなあ」
「ええやん、白石の方がよっぽど健全やで」

何となく安心した。
そういうふうに考えてるの、私だけじゃないんだ。

「そういうはどうなん?」
「え?」
「ロマンチストかどうかっちゅー話」
「まあ私もロマンチストやで、うん」
「そうなんか」
「まあ、告白なんてされたことないからいざ告白されたら付き合ってまうかもなあ」
「ほんなら、今俺が告白したら付き合ってくれるん?」
「は?」

突然の言葉に私は目を丸くした。
な、何をいきなり…!?

「いや、冗談冗談」
「…ああ、そうやね。びっくりさせんなや」
「でも今ドキっとしたやろ」
「そらするやろ、しかも好きな子やないと…って話しとった後やし」
「まあなあ」
「あ、もうすぐ予鈴鳴るで」
「ほな急がんと」


「冗談やないんやけどね」


白石が何かを言った気がしたけど、予鈴に紛れて聞こえなかった。




















11.05.12