黒子くんの部屋でDVD鑑賞中。
黒子くんの好きな小説が原作の映画。
私も本を貸してもらったから内容は知ってるけど、上映中は忙しく見る機会がなかったので、二人とも見るのは初めて。

原作が面白かったから楽しみにしてたんだけど、余計な部分を付けたして冗長になっていたり、
逆に大事な部分をカットされて意味がわからなくなっていたり。
正直ちょっと気が散ってきてしまっている。

ぼーっとしながら画面を見ていると、これまた原作になかったラブシーン。
ちょっと濃い。ちょっと恥ずかしい。
ちらっと隣にいる黒子くんを見てみる。

そしたらバチっと目が合ってしまった。

「わ」
「あ、すみません」
「いや、こっちこそ」
「………」
「………」
「…恥ずかしいですね」
「…うん」
「………」
「………」

沈黙が流れる。
いや、映画見てるから当たり前なんだけど、なんだか気まずい。

「「あの」」

何か話を、と思って声を掛けたら思いっきりかぶってしまった。

「あ、どうぞ」
「いやいや、黒子くんどうぞ。大した話じゃないので」
「そうですか、その」
「うん」
「キスしていいですか」

思わぬ言葉に目をまんまるくしてしまった。
え?…え?

「ええええ!?」
「嫌ならいいです。嫌がることはしたくありませんから」
「い、嫌じゃない!です!」

黒子くんはちょっと驚いた顔をした後、少し照れた顔をした。

「じゃあ、そうですね…。とりあえず目を瞑ってください」
「……はい」

キスをするのは初めて。黒子くんと、というか、キスすること自体が。
目を瞑ると視界は真っ暗。自分の心臓の音が大きくなるのがわかる。
まずい、心臓が爆発しそうだ。

「………」

心音が最高潮に達した時、唇に何かが触れるのを感じた。
ああ、キスしてるんだって思ったと同時に唇が離れてく。
目を開けると黒子くんはちょっと照れくさそうに笑っていた。
つられて私もちょっと笑って、その後は特に何を話すわけでもなく、なんとなく向かい合ったまま座っていた。

「………」
「………」

何を話せばいいかわからず、再び沈黙だけが流れる。
多分黒子くんも同じなんだろう。
……ど、どうしよう。何か言った方がいいんだろうか。

「…あ、の」
「エーミリーーーー!!!」

私が話しかけようとしたと同時にテレビから爆音。
主人公がヒロインの名前を呼ぶ声だ。

「あ、…えーと」
「…その、続き、見ましょうか」
「そう、だね」



三分の空白 

capriccio様から拝借
きみにキス、きみとキスお題



2012〜2013年拍手ログ


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