「わあっ!?」

ひょいと抱き上げられてベットに優しく寝かせられる。
氷室が私に覆いかぶさる形になって、それだけで顔が真っ赤になる。

「ひ、氷室」
「…どうしても嫌?」

氷室は少し眉を下げて聞いてくる。

「どうしても嫌なら、すぐに退くよ」
「い、嫌って言うか、ちょっと怖いのと」
「オレがが怖がることすると思う?」
「思わないけど、その」
「なら問題ないだろう?」
「いやいやそれだけじゃなくて!恥ずかしいし!」
「?何が?」
「だ、だって裸になるじゃん…」
「うん」
「…氷室、恥ずかしくないの?」
「うん」

こ、この人は…!

「私は恥ずかしいの!」
「オレしか見ないのに?」
「だから恥ずかしいじゃん…」
「?」

本当にわからないようだ。
さすがというか、なんというか…。


「は、はい」
「…怖いことしないのは、わかっただろう?」
「…う、うん」
「恥ずかしいのは、きっとすぐ収まる」
「え、えええ!?」

そう言って氷室は私の唇にキスをする。
氷室の舌が私の舌をとらえる。

「…ふっ…」

頭がくらくらするような、不思議な感覚。
思考が少しずつ麻痺してくる。

「…っ」

息が苦しくなってきたところで、氷室はキスをするのをやめる。
氷室の顔が、離れていく。

「…
「氷室、あの」
「うん」
「…怖く、しないんだよね?」

恐る恐るそう聞くと、氷室は優しく笑った。

「当たり前だろ」

…うん、まあ、その、まだ少し怖いけど。
でも、氷室は私が怖がることなんてしないだろう。そんなのわかってる。
恥ずかしいのは、もう、本当にものすごく恥ずかしいんだけど。

「な、なら、いい、です…」

でも、氷室がしたいのなら。それなら、勇気を出してみる。
もともと、氷室以外とする気はないのだ。
キスもこういうことも、初めても最後も氷室がいいと思っていた。
今まで避けて来たけど、ずっと避け続けるわけにはいかない。

だから、大丈夫。そう心の中で呟いた。


「…っ」

氷室は自分の上着を脱ぐと、私のシャツに手を掛ける。
ボタンが一つ一つ外されて、心臓が跳ねる。

「…んっ…」

下着の上から胸を揉まれて、声が漏れる。
氷室は私のブラジャーのホックをはずした。

「…っ」

胸が露わになって、顔がかあっと赤くなる。
思わず手で隠そうとするけど、氷室がそれを阻止する。

「うう…」
「隠しちゃダメだよ」
「だって」
「恥ずかしくないよ。大丈夫」

氷室はそう言うとその口を私の胸の頂点に近付ける。
ちゅう、と吸い付かれて体が跳ねる。

「…あっ…」

一方の乳房は頂点を甘噛みされてコロコロ弄ばれて、もう一方は少し乱暴な手つきで全体を揉まれる。
段々恥ずかしさより、快感が私の頭の中を占めていく。

「…んっ、あっ…」

刺激を与えられるたびに声が出て体が震える。
多分、私の顔は今真っ赤だ。

「あっ…はあ…」

氷室の腕が、私の下半身に伸びていく。
太ももを撫でられて、また体が跳ねた。

「あっ、そこ、は…」

太ももを撫でていた腕を、そのままスカートの間へ。
氷室の指が、下着越しに私の秘所へ触れる。

「…っ」
「ここは?何?」
「あっ、ダメ…は、恥ずかしいの…っ」
「…前言撤回」
「え…?あっ、やあ…!」

氷室は私の秘所を上下になぞりながら、楽しそうな笑顔で言う。

「恥ずかしがってる方が、可愛いよ」
「…っ、バカ…!」

氷室は笑いながら、私のスカートと下着を脱がす。
今度は秘所が露わになった。

「…っ!」

両足を掴まれて、左右に広げられる。
頭が沸騰しそうだ。

、可愛いよ」
「…、み、見ないで…!」
「ああ、そうか。触りたいんだよね?」

氷室はそう言うと今度は直に私の秘所に触れる。

「あっ、ちが…!」
「言ってたじゃないか。『触りたい』って」
「それは、あっ、言ったけど…っ、」

私が触りたいと言ったのは髪の毛であって。

「オレだって触りたいんだよ。の髪も、髪以外も、全部」

氷室は私の秘所に唇を寄せる。
それ、は。

「あ、だ、ダメ…!」

私の制止も虚しく、氷室の唇は私の秘所に触れた。

「あっ、ああ…っ!」

氷室の舌が、私の秘所をなぞり始める。
生暖かい感触。
ゾクゾクと快感が全身を駆け巡る。

「氷室…っ、ん、あっ!」
「濡れて来たね」
「やあ…っ、あっ、あっ!」

氷室に言われなくても、自分で愛液があふれ出てくるのがわかる。
氷室が私の秘所を刺激するたびに、くちゅりと、いやらしい音が響く。

「あっ、やあっ…」

思わず氷室の頭を両手でつかむ。

「…そんなに、オレに触りたい?」
「違…っ、しゃ、喋られないで…、息が…っ」
「ああ、ごめん。ちゃんと触ってあげないと」
「あっ、ああ…!」

氷室の唇が離れたと思うと、舌とは違う刺激が私を襲う。
指が、私の中に入ってくる。

「…っ!」
、痛くない?」
「…ないけど…っ、あっ、やあ…!」

痛くない。痛くないどころか、気持ちいい。
氷室の指が優しく抜き差しされるたびに、また私の奥から愛液が溢れ出す。

「氷室…っ、ああ!」

氷室の指がもう一本、私の中に入ってくる。
びくりと体を震わせて氷室の名前を呼ぶと、氷室が優しく私に話しかける。


「…あっ、ああ…」
「せっかくこんな近くにいるんだ。そんなよそよそしい呼び方は嫌だな」
「あっ、は…、あ…っ!」

回らない頭で必死に思考を巡らせる。
そうだ、今、私と氷室はこんなに近くにいるんだ。
その事実が、とても嬉しいと、そう思う。



呼び方、そう、名前だ。

「あっ、辰也…」
「うん」
「辰也、あっ、辰也…っ!」
「もう一回」

辰也の指はどんどん激しくなる。
水音を立てて出入りして、奥の方を刺激したり。
私の頭の中はどんどん真っ白になって行く。
残るのは、辰也のことだけ。

「辰也、辰也…っ」

辰也の体に必死にしがみつく。
もっと、近くにいたい。いつの間にか、そんなふうに思っている。

「ふ、あ…っ」

指が抜かれて、辰也の体が少し離れる。
それが、寂しいと思ってしまう。

、そんな顔しないで」
「!」
「もうすぐ、一番近いところにいられるようになる」
「…う、うん」

私の心を見透かしたような言葉に、心臓が跳ねる。

「まだ怖い?」
「…ううん」

もう怖くない。むしろ、もっと、もっとと思う。

「私も、その」
「うん」
「…触りたいから…」
「髪の毛を?」
「!い、意地悪…!」
「はは、ごめんね」

辰也はそう言って、私に触れるだけのキスをする。

「オレも、に触りたいよ。の全部に」

辰也は自身に避妊具を着けると、再び私の足を広げる。
心臓が今まで生きてきた中で一番大きな音を立てている。

「…っ」
、好きだよ」
「っ、ああ…っ!」

辰也が私の中に入ってくる。
苦しさと、痛みが一気に襲ってきて、でも、一緒に充足感も広がる。


「…もっと…、来てっ、…ああっ!」

一気に辰也が入ってきて、背中を仰け反らせる。

「あっ、はあ…」
、大丈夫?」
「だい、じょうぶ…っ、大丈夫だから…」

辰也の背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめる。
もっと、奥まで来てほしい。
辰也とくっついていたい。

「あっ、やあっ、あっ…」

今はもうなんで避けていたのかわからない。
ちょっと痛いけど、怖いことなんて何もない。
辰也が、私が怖がることなんてするはずないと、わかっていたのに。

、すごく可愛い顔してる」
「んっ…ああ…っ!も、もっと…」

そう言うと、辰也は少し驚いた顔をする。

「っ、も、もっと、近くにいたいの…!」

今までしたいとか、そう思う理由がわからなかった。
でも、今はわかる。
好きな人の一番近くにいたい。
好きな人に、一番近付く方法がこれなんだと。

「ああっ…辰也…」
「オレも、もっととくっつきたい」
「ん…っ」

辰也は私を抱きしめて、深く深く口付ける。
口から、秘部から、いやらしい水音が響く。

「はあ…っ、あっ…」
、大好きだよ。ずっと、こうしたかった」
「あっ、わ、私も…」
「うん」
「もっと早く、あっ、こうすれば、よかったって…っ。だって、…っ、こんなに、幸せなことなのに…っ」

自分で自分をバカだと思う。
今もまだ恥ずかしい気持ちはあるけど、怖いことなんて何一つなくて。
こんなに気持ち良くて、嬉しくて、幸せなことをどうして避けて来たんだろう。
涙が出るほど、幸せなのに。

「いいよ、。もういいんだ」
「あっ、辰也…」
「今こうやって、一つになって、一番近くにいる。それだけで十分だ」
「あっ、うん…好き、好きだよ…っ」
…っ」

もう一度キスをして、抱きしめる力を強くする。
もっと、もっと。

「あっ、はあ…っ、あっ、なんか、ダメ…」
「…っ」
「へ、変…っ、おかしくなりそ…っ」
「うん、オレもだ」
「んっ、ああ…っ」

目の前がチカチカしてくる。
もう頭の中は、辰也のことだけ。

「あ、ああ…!」

感覚が頂点に達して、一瞬意識が遠のきかける。

「…くっ、はあ…」

辰也も私の中で弾けて、私たちはもう一度キスをした。


「…ん」

ああ、幸せだなあ、と。
未だぼんやりした頭でそんなことを考えていると、横から聞き覚えのある音楽が。

「…?」

顔を横に向けると、音楽の元はテレビのようだ。

「あ、映画…」

そうだ、映画を見てたんだ。
画面はいつの間にかエンディングロールになっている。

「終わっちゃったね」
「う、うん…」

なんか妙に恥ずかしい。
映画のことなんて全く忘れていた。
なんか、そんなに夢中になっていたのか、みたいな…。

?」
「え、えっと、いや、その」
「……」

辰也は微笑んだと思うと、リモコンでテレビの電源を切った。

「辰也」
「邪魔だから」
「邪魔って」

辰也はぎゅっと私を抱きしめる。

「誰にも、映画にも邪魔されずに、幸せを噛み締めたいよ」

優しく頭を撫でられて、私も幸せを噛み締める。
好きな人の、一番近くにいること。
すごく、すごく幸せだ。








近付きたいの
13.05.06

初めて話はあんまり凝ったことさせられないしあんまりノッて書けないな〜とか思ってたんですが、結構書くの楽しくなってきました
エロそのものというより、好きって気持ちが膨らんでこの人としたい近付きたいという心情を書くのが楽しいです
初めて話じゃなくても書けることは書けるんですけど、やっぱりちょっと意味合い違うんですよね 

あと氷室さん面倒くさがり+少しでも早くって思ってるからテレビの電源だけ切ってます
DVDデッキの電源はそのまんま 無駄なこだわり






感想もらえるとやる気出ます!