夏休みに入って、いつも学校で見てたはずのあいつを見なくなって
なんか、寂しい、というか

「…いきなり電話したらびっくりするよなぁ…」

携帯の画面の”越前リョーガ”の文字をなぞる。
メールアドレスを交換したときに一緒に電話番号も教えてもらったけど、この番号にかけたことはないし、かかってきたこともない。あたしとリョーガは仲がいい方ではあるけど、特別仲良しなわけではないし、学校でよく話すだけで、休日に遊んだりとかなんてしない。

「夏休みって、つまんないな…」

学校があるときは毎日のようにリョーガに会えて、話せて。だけど今は、会えない。携帯の電話帳でリョーガの番号を呼び出して、通話ボタンを押そうとするけど、親指が寸前で止まる。

「……あたしの意気地無し〜〜……」

学校であんなにいろんなこと話したのに、何を話せばいいのかわからない。あ〜〜〜〜いつも何話してたんだっけ。えっと、家であったこととか、テレビの話だっけ?あ、あと漫画の話とかもよくしたなぁ。

「…会いたいなぁ」

ベッドに飛び込んで、枕に顔を埋める。携帯がベッドから落ちたのが見えたけど、放っておいた。
あ、れ 着信だ、誰かな。面倒くさいなあ、と思いながら落ちた携帯を取って、画面に出ていた名前は

『越前リョーガ』

「え、えええええ!?」


ベッドから飛び起きて、何度も携帯の画面を見返す。え、どうしようどうしよう、早く取らなきゃ、でも、心臓がバクバク言って、でも取らないと切れちゃう。私は深呼吸して、通話ボタンを押した。
「…もしもし」
「よー、元気か?」
「うん、ま、元気だよ。リョーガは?」
「元気元気」

やばい、すごいドキドキしてる。

「ね、何か用があって掛けてきたんじゃないの?」
「ん?別にないけど」
「え」
「あ、の声が聞きたかった、ってのが用か」
「あの、ちょっと、リョーガ?」

え、あれ、なんか、ついてけないんですけど。

「おい、聞いてる?」
「え、う、うん」
「んじゃ、さっきの意味わかってる?」
「あ、その」

電話の向こうで笑い声が聞こえる。ちょっと、こっちは本当どうしていいかわかんないってのに。

「…ね、それさ、本気?」
「本気も本気」
「う、嘘でしょ」
「俺嘘はつかねーぜ」
「だから、バカなこと言わないでよ」
「おいおい、何回言ったらわかるんだよ。俺は本気でお前が好きなんだって」
「……え!?」
「じゃーなー」
「ちょ、ま…」

リョーガはそう言って電話を切ってしまった。ねぇ、ちょっと、さっきのは本当なの? どうしよう、新学期、どんな顔して会えばいいのかな。

(でも、すごい、会いたくなったかも)

(早く、新学期になればいいのに)


















06.08.23
リョーガ 出番 少ない………
学校ネタはやっていいものかと迷ったんですが あの 書きたいからリョーガ それだけ