「うわあ、真っ暗」

アルバイトが終わって店を出ると、外は真っ暗。
いつもはこんなに遅くならないけど、今日は特別忙しかったのだ。
こんな道を帰るのはちょっと怖い。
こんなときは。

「あ、花宮?今平気?」

こういうときに頼るのはやっぱり恋人でしょう。

『なんだよ』
「いやあ、バイト終わるの遅くなちゃってさ。迎えに来てくれたら嬉しいなー、なんて」
『知るかよ』

電話口からぶっきらぼうな声が響く。
でも、こうやって押し問答していればちゃんと来てくれるだろう。花宮はそういうやつだ。
そう思って会話を続けていると、店の扉が開いた。

「あれ、さん?」
「先輩」
「今帰り?暗いから送ってこーか?確か家の方向一緒だよな」
『おい』

先輩と会話していると、電話口から不機嫌な声。
慌てて携帯をもう一度耳に当てる。

『そこで待ってろ』

それだけ言って電話は切れた。

「ああ、ごめん。電話中だったんだ」
「いえ。あと、送ってもらわなくても大丈夫です。彼氏が迎えに来てくれるって」
「あー、いいねえ。じゃあ、お疲れ様」
「お疲れ様でーす」

そう言って先輩の後姿を見送った。



「…おい」
「痛っ」

バイト先の前のガードレールに座って携帯を弄っていると、頭を叩かれた。

「花宮」
「ボーっとしてんじゃねえよ」

思っていたよりずっと早く来てくれた。
彼の息が上がっているのは、気のせいじゃないはず。

「そんなに慌てて来なくてもよかったのに」
「慌ててねーよ」
「あのねえ、送ろうかって言ってくれた先輩、彼女いるからね」
「………」
「ていうかその場にいたし、彼女。三人で一緒に帰る?って意味だよ、あれ」

横を歩く花宮は歩みを止めて、私の方を向く。
そして、私の頬を思いっきりつねった。

「いひゃい、いひゃい!」
「うるせえよ。余計なことべらべらしゃべってんじゃねーよ」

ふふっ、と私は笑う。
ああ、素直じゃないなあ。

「ありがとね」
「………」
「何その顔」
「なんでつねられて礼言ってんだ?」
「そっちじゃないよ!」

いくらこんなやつと付き合ってるとはいえ、つねられてありがたがるような性癖は持っていません。

「来てくれて、ありがとね」

そうお礼を言うと、花宮は照れたようにそっぽを向いてしまった。

「また呼んだら、来てくれる?」
「…気が向いたらな」
「よろしくねー」

そんなことを言っておきながら、毎回来てくれる。
素直じゃないんだから。














そんなところが好きなんだけど
13.01.07





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