学校も部活もない、珍しい一日オフの休日。
どこか行こうかという話も出たけど、結局のんびりしたいという話になり、火神の家でまったりしていた。

「あ、やべ」
「どうしたの?」
「飲み物なくなった」

あー、昨日帰りに買うの忘れてた…と火神は頭に手を当てて呟いた。

「なんにもないの?」
「水ならあるけど、水飲まねーだろ、お前」
「別にいいよ、水でも」
「いいよ、オレも他のモン飲みてーし」

そう言って火神は財布を取って玄関へ向かう。

「一緒に行こうか?」
「いーよ、別に。すぐだし」

そう言われれば無理に着いて行く理由もない。
「行ってらっしゃーい」と言って火神を送り出した。

さて、雑誌でも読んでいようか。
そう思って自分の鞄から読みかけのファッション誌を取り出した。

「…暑い」

読み始めたはいいものの、暑くて集中できずまったくページが進まない。
そんな集中力を要するわけじゃないのに…。

「…クーラー…」

壁に掛けてある、クーラーのリモコン。
…つけてもいいんだろうか。
一応ここは他人の部屋だし、勝手につけるのはちょっと気が引ける。

うーん、まあ、上着でも脱げばいいか…。




しばらくして、玄関から鍵を開ける音と扉を開く音がした。

「ただいま…ってお前」
「お帰りー」

火神はコンビニの袋を床に置くと大股でこちらにやってくる。

「なんつーカッコしてんだお前は!」

ベッドに寝転がる私を見て大声で叫ばれる。
シーツをグイッと引っ張られ、そのまま床に落ちた。

「いったー!」
「なんでここで寝転がってんだ!つーかなんで上着脱いでんだ!」
「えー?」

暑かったので上着を脱いでキャミソール一枚になってるけど、そんなに叫ばれるほどじゃ。

「別に裸になってるわけじゃあるまいし」
「当たり前だボケ!」

火神は「はあ」と大きくため息を吐いた。
火神って意外と真面目だよなあ。

「お前にはこう…慎みってもんがねーのか」
「あるよ?」
「どこがだ!」
「火神以外の前では慎んでるよ?」
「オレの前でも慎め!」
「えー、やだー」
「なんでだよ!」
「ちょっと、そんなこと女の子に言わせる気?」

私の言葉に火神は一瞬固まる。

「私が誰彼構わず無防備な姿見せてるみたいに言わないでよね」
「…ホントに襲うぞ」
「どうぞ?」

火神は少し乱暴に私を引き寄せると、キスをする。

私だって高校生の男の子がどういう生き物かくらい知ってるし、
部屋に2人きりでこんなカッコしておいて「火神を信用してるから」なんて言わない。

火神だから別にいい。火神以外の前じゃ絶対にこんなことしないから。







S・O・S

12.09.18